第34話

柴の事で、私はいっぱいになった。

少し前は柴の事を避けていたのに今は

こんなに探して、一心不乱になって。

この自分の単純さには自分でも苦笑いしてしまいそうになる。

始めてだ、どうしても失いたくないものが出来るものも、

大切で仕方ないものも。

早く見つけなくては、と焦る私を

あざ笑うように時間は過ぎ去って行く。

「もうこんなに経ってる」

三十分も無我夢中に走り回っていた。

もう、会えないのかな、

だってこんなに時間は経っている。

「そうだ、神社で、崖とかなかったっけ」

もうそこしか心当たりがない。

もうこれが最後のチャンスだ。

力を振り絞って全力疾走した。

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