第32話

「柴くん、七菜香ちゃんは?」

「今日は来てないよ」

「そっか、何かあったのかな」

「何かしらあったんじゃない?」

柴の目の下には濃くてはっきりとしたクマができていた。

そして、何より白目には白い部分が残っておらず、

真っ赤に染まっていた。

この事は触れていいものなのか、それとも

触れてはならないものなのか。

選択肢は二つしかないのに、どちらを選んでも

不正解な気がした。

ほんの少し考えてみて、選択肢は決まった。

やんわりと聞いてみることにする。

やんわりなら大丈夫、深くは触れない方がいい

と分かっている。

「目、真っ赤だけど大丈夫?

まさか、兎アレルギーとかじゃない?」

「まさか、そんなわけないよ。

ちょっと目が痒くて」

「そっか」

二人、あの後よそよそしいまま

それぞれの家に帰った。

「バイバイ、柴くん」

「うん」


























「さよなら」

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