第30話
この鍋がなぜこんなにも美味しいのか気になるところだが、
それ以上に七菜香の小説家生活が気になってしかたがない。
「いつから小説を書き始めたの?」
「えっとね、一年前から、出版社さんから声を掛けてもらって
細々と書かせてもらってるの」
「そうなんだ、小説が完成するまでにどのくらいかかるの」
「それはね」
柴も興味津々だったのか、私が質問を始めると、
それにつられて質問を繰り返した。
気が付くと、七菜香を困らせるくらいに
二人そろって質問攻めにしていた。
「私も新人だからそこまで分からないよ」
「そっか~」
今日は昨日とは比べ物にならないくらい
心もお腹もいっぱいになった。
全てが満たされたのに、足取りは軽い。
羽が生えたみたい。
そんな感覚が初めて分かった気がする。
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