第23話

いた、呑気そうな柴がいた。

今更だが、私は何でこの人に会いたいと思ったのだろうか、

姿を見た途端、理由が分からなくなった。

「あれ、橘音、久しぶりじゃん」

「うん、久しぶり」

変わらない声を聞くだけでこんなに

胸が弾むのは何でだろう。

「兎の良さが私にも分かってた気がする」

「気づくの遅いよ」

柴のいつもの声が分からないくらいに

私は心が不安定になっている。

でも、今でもわかる。

私は柴の声が好きだ、

柴は歌い手にぴったりだと思う。

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