第13夜
自分に起こっている何かがわかるかもしれない。つむぐはそう考えると、恐怖心よりも先に足が走り出していた。
「待ってくれ!」
女の走る後ろ姿につむぐは叫んだ。無論、その声に素直に止まることはない。挙句の果てには「助けて、殺さないで」と叫びながら逃げ出したのだ。
さすがにこう叫ばれると、傍から見ればつむぐが女性に乱暴をしているようにしか見えない。そして案の定というか、結果的にはその叫び声を聞いた男達がつむぐに何をやっているんだと近づいて来た時点で、つむぐは踵を返して反対方向に逃げ出すしかなかった。そのまま逃げたその足で家へと逃げ帰ると、乱暴に靴を脱ぎ捨てて疲れた様子で自室のベッドへと倒れ込んだ。顔を横へと向けると、ベッドの脇に置かれた拳銃がその銃身に光を反射している。つむぐは深く溜息をつくと、考えることを止めてそのままその瞳を閉じた。
つむぐが目を覚ましたのは時計の針が午前二時を回った頃だった。静寂な部屋のなかには、時計の針の進む音だけが静かに響いている。
つむぐは寝ぼけた様子で部屋を見回すと、壁の時計へと目を移した。
「寝入っちまったのか」
そう呟くと、つむぐは体を起こした。
明かりのない部屋のなか、暗闇と静けさのなかでつむぐは身震いすると、喉の渇きにキッチンへと足を向けた。明かりもつけないままにキッチンの冷蔵庫のなかからペットボトルを取り出すと、飲み口へと口をつける。冷たいミネラルウォーターが喉の渇きを潤しながら体へと染み渡ると、つむぐの寝ぼけた思考も段々と覚醒していく。しかしその脳裏に川辺での出来事を思い出すと、つむぐは難しい顔をしてペットボトルを乱暴に冷蔵庫へと放り込んだ。そしてその足でそのまま洗面所へと向かう。
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