第10夜
つむぐはベッドに寝転びながら何かを考えるように、天井を見上げていた。
そして体の向きを何度か変えると、右手で脇に置かれた物を手にした。それをそのまま顔の前に持ってくると、つむぐは溜息をついた。
「なんだかな」
そう呟くと、つむぐは手のなかにある物をまじまじと見つめた。それは鈍色に輝き、蔓が巻き付いたような唐草模様が全体に彫り込まれ、重厚な重みがずっしりと手に鉄の質感を与えていた。持ち手の部分には手に馴染ませるよう木製の持ち手がつけられ、濃く染められた焦げ茶色のそれには輪郭のはっきりとした木目が見える。
つむぐは手に持ったそれの引き金にゆっくりと指をかけた。
「どう見たって、これ拳銃だよな?」
つむぐは自身で言葉にしてみて、改めて手にしている物が一般的に言う拳銃であるということを確認していた。それはよく警察官が腰にかけているニューナンブと呼ばれる拳銃とは違い、どちらかと言えば西部劇に登場するガンマンが手にしているような代物で、ごつくて大きなアンティークリボルバーという印象が強い。
つむぐは脇に手にした拳銃を置くと、両手を頭の下に入れて再び天井を見上げた。
どうしてこんな物が自分の所にあるのか、昨日の出来事が何だったのか。それはつむぐの頭を混乱させるには十分すぎる程だ。何かを理解しようにも、非日常的で有り得ないことを受け入れるのは難しい。
つむぐは背伸びをして体を目一杯伸ばすと、肺に溜まった空気を吐き出した。そしてそのまま脱力感を感じながら、これからどうすべきかを考えながらつむぐは目を閉じた。
しかし考えてもどうしようもないことは、何をしても変わりはしない。つむぐは勢いよく起き上がると、財布と携帯電話をポケットに突っ込むと家を出る。そしてそのまま、まっすぐに昨晩の奇妙な体験をした場所へと足を向けていた。
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