第05夜
「俺も実は、ついこの前知ったことなんだけどな。一般的な祭、祭礼になるのかな。そういう類のものっていうのは豊作や無病息災なんかを要は神様に願うものなんだよ。逆に祭りっていう漢字本来の意味は葬儀、まあ慰霊がそれにあたるんだけどさ」
「それじゃあ、お盆祭りとかが本来の使い方なのか」
「まあ、そうだな。とにかくそれが本来の祭りらしいんだよ。それじゃあ、そう考えた時にさ、毎年行われているこの祭はどっちの意味なのかが気になったんだよ」
太一は、また一口缶ビールを飲むと人々が賑わう方へと視線を移した。
「家の神社のすぐ近くに昔から古い蔵があるだろ。普段から鍵をかけて厳重に管理はしているんだけどさ。まあそれは外からの外敵にって意味で、俺にしてみれば鍵なんかは取ろうと思えば結構簡単に手に入るわけだ」
「おまえ、まさか……」
つむぐは呆れた顔をしながら、太一がこっそりと蔵に忍び込む姿を思い浮かべた。
太一の家はこの土地に古くからある淵ノ辺神社の神主を代々引き継いでおり、太一自身は次男ということでその役目を継ぐことはないのだが、本人自体は興味があるらしく時折色々と探索や調べ物をしている。
太一はそれに鼻で笑うと、軽く笑みを浮かべた。
「まあ、昔のことを調べるには古い文献とか古文書を調べるのが一番だろ。本当は家を継ぐわけでもない俺なんかが、目を通していいものなんかじゃないんだけどね」
「またおまえは。それで、いったいどんな成果があったんだよ」
「そうだな、所謂隠匿された黒歴史みたいなことも書いてあったよ。まあそれは祭の由来とはまた別件だけど、昔からこの町でも表沙汰にはしたくないこともあったってことさ」
「なんか、嫌な話だな。聞いたら呪われるとか、そういうのは面倒だから止めろよな」
太一はその言葉に一笑すると「呪いなんかないよ」と、言い放つ。
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