第04夜

 二人はどこで手に入れたのか、缶ビールを片手に会場から少し離れた位置にある大きな岩の上に腰かけていた。先程屋台手仕入れたフライドポテトを齧りながら、人々が賑わう光景を眺めている。

「祭の露店もそうだけど、これも楽しみの一つだな」

 フライドポテトを口に咥えて笑いながら、太一は気持ちよさそうに夜空を見上げた。

「おまえはどこの親父だよ。というか毎年のことだけど、何でおまえはそう毎年浴衣を着込んでくるんだ。私服でも充分だろ、動きにくくないか」

 つむぐは賑わう人々を遠目に眺めながら、何気なし聞いていた。

「いいんだよ、俺が気に入っているんだから。せっかく家にあるっていうのに、着ないのはもったいないだろ」

 太一は「それに、風情だろ」と言葉を付け足すと笑って見せた。

「そういうものか」

「そういうものなんだよ。そういえば知ってるか、この祭の由来?」

「うん、祭の由来。さあ、そういえば考えたことなかったな」

「つむぐも無知だな。普通は自分の町で行われている祭事のことぐらいは、それなりに知っとくもんだぞ」

 太一はにやりと笑みを浮かべながら、目を細めた。

「悪かったな無知で、俺はそういう郷土史や歴史にはあまり興味がないんだよ」

 つむぐは面倒臭そうに太一から視線を逸らせると、溜息交じりに答えた。

「まあまあ、そう拗ねるなよ。代わりに特別な方の話をしてやるからさ」

「特別な方って、何かあるのか」

 太一は缶ビールを一口飲むと、少し真面目な顔をして徐に話を始めた。

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