第03夜

 公園の入り口付近に設置された広場の噴水を通り過ぎると、それ以上に広大な小高い丘を囲うような形で作られた広場へと出る。広場全体には芝生が敷き詰められ、回りを木々が生い茂り一見すると森の中にいるように感じるだろう。そこには所々に露店があり、金魚すくいから射的にアンズ飴等と、様々な祭の定番といったものから占いや装飾品などまでもが売られている光景はさながら文化祭を彷彿とさせていた。

「相変わらず賑やかだな。毎年もそうだけど、このバカみたいに盛大なところがいいんだよな」

「まあ、回りにはほとんど民家はないし。いくら騒いだところで苦情を言う奴もいなだろうからな。というか、年々ひどくなっていってないか?」

 太一の爛々とした楽しげな様子を横目に、つむぐは人ごみを少し面倒臭そうに見つめながら肩をすくめた。

「それも祭の醍醐味なんだよ。それに今年は花火まで打ち上げるらしいしな」

「それって冗談だろ。町中で花火って。よく許可が降りたもんだな」

 そんなつむぐの言葉に太一は「さあ」と気にも留めない様子で言葉を返すと、足を露店の立ち並ぶ方へと向けていた。

二人は小一時間ほど立ち並ぶ露店を物色すると、その場を後にして坂を下った先にある別の会場へと場所を移していた。そこには大きな矢倉が組まれ、その回りには飲食物を中心とした露店が並び、酒類も多く売られていた。その少し奥にはちょっとしたステージがあり、何かの催しものが開催されている。

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