第02夜
鍵祭り――。
それはつむぐの住む澄ヶ沼で毎年行われる恒例行事で、特別に他のどこの祭りよりもというようなところはないが、規模は割と大きなものだった。会場は県立公園の敷地内で行われるのだが、この県立公園の敷地面積は東京ドームと同程度の面積を有しいているというのだからたいしたものだ。そこに数多くの露店に、一風形の変わった矢倉が組まれる。
つむぐは待ち合わせの時間より少し早めに到着すると、公園の入り口付近で壁に背を預けていた。その横を祭の会場に向かう人々の列が賑わいながら通り過ぎる姿を、つむぐは横目で眺めていた。
「おお、早いな」
しばらくしてつむぐは聞きなれた声に気が付くと、視線を声のする方へと移した。そこにはひょろりとした長身に藍色の浴衣、長髪を後ろで束ねて、今時珍しい丸眼鏡をかけた男が呑気な雰囲気を漂わせながら下駄を鳴らせて歩いていた。
「そうか。いつも待ち合わせの時は、僕はこんなものだろ」
「いやいや、おまえの場合は大抵時間に遅れるか、稀に時間にぴったりに現れるぐらいだろ。時間通りに動いていると思ってるのは、おまえだけだよ」
そう言うと『古雅 太一』は呆れた様子で、軽い溜息をついた。
「そうか?」
少し不満げに答えるつむぐに「ああ」と太一は当然だというように答えると、ゆっくりと歩き出した。
「それじゃ、行くか」
「ああ」
つむぐは太一の言葉に少し納得がいなかい様子だったが、しぶしぶと太一の後に続いた。
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