第37話:堕天(BIRTHDAY)
そこでは美しい音楽が鳴っていて、オレはそれらを統べるようにその頂点に立っていた。それは得も言われぬ快感だったが、どうしてか、足下がぐらついていた。
音が足りない、ギターが欲しい、あの人のギターの音色が欲しい。
欲しい。欲しい。欲しい。
「彩瀬、さん……」
思わず吐いた自分の寝言で、オレは覚醒した。神谷は仕事に行くというメッセージをスマホに残して辞したらしい。
「あや、せ、さん……」
オレは消え入るような声で彼の名を呼び、気付いたら自分の性器に手を伸ばしていた。
そして、神谷を大切にしろと言った張本人の顔、瞳、細長い指を思い出しながら性器を嬲った。
「あっ、んん、彩瀬さん——!」
右手が止まらなくなった。オレの頭は、あの七弦のギターを爪弾く指、それがオレの胸の先に触れる摩擦の感覚、オレの中に挿入される快感を想像してただただ性器をいたぶった。あの手がここをこうしてくれているかのような錯覚すら起こしながら。
欲しい、音色だけじゃない、彼の全てが欲しい、彼自身を感じたい。
「あ、あ、あやっ、彩瀬、さん!! イ、イキたいっ! 彩瀬さん! やっ、イく! イカせてく、ださい! タケ——あぁん!!!」
杞柳さんにあれほど射精させられたというのに、寝間着とシーツに精液が舞った。震えながら、脱力しかかる右手を再び性器にあてがい左手の指を舐めてシャツをたくし上げ敏感になっている左右の突起を擦り始めた。
「ぅあ! あ、あ、タケルさん! 挿れ、て! オレの、中に、全部!! 突いてください!! ひぁぁあ!! 奥突いて掻き回して滅茶苦茶にイカせ——!!」
視界が真っ白になり、過去に数度体験した『潮吹き』を、自慰行為で体感してしまった。その快感ときたら、筆舌に尽くしがたいものだった。
……何かが吹っ切れた瞬間だったのかもしれない。
つまり、
彼を手に入れるためなら何でもする、というどす黒い決意の生誕。
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