第二話 旅に後悔は付き物
「腹へったな」
歩いている途中ふとそう思った
ここに着いてたときには既に昼であった。故に腹が空いている
その他の原因としたら船に揺らされてろくに食事ができなかったのを思い出す
「飯屋、どこかな」
とりあえず飯屋を探さないとどうにもできないから、そうする
俺は大通りに出ていた
大通りに往来する者達は行商人が一般的であり、町の人が多く通っている
あまり人混みが多いところは苦手なんだけだな
人混みを避けつつ歩いていると簡単に飯屋を見つけることができた
大通りは人が多い分、商業施設が多いのが良い。路地裏に行って隠れた名店を探すのも良かったがそんな時間を使っている暇はない
その飯屋のドアを開け、中に入る
入ってみると以外と人は多く、俺とおなり年に見える者が多くいた。その他にも爺さんやイカツイ男もだ
あ、俺こう見えて16だから
年齢がバレたところで俺は店主と思わしき人と近いカウンターへと座る
「いらっしゃい、何にする?」
「一番人気なもので」
「はいよ」
そう言ってブッキラボウのおっさんはどっかに行った
ここに来て数時間も経っていないのにメニューなんぞわかるか
こんなのは適当に安いもの、人気なものって頼んどけば良いんだ
「また、出たってよ」
「またか?これで何件目だ」
「知らねぇよ。でもこれからさきも気を付けねぇとな」
「ああ、そうだな」
何やら向こう側で話をしているが何を言っているのかさっぱりだ
ただ、ここで何かあったのは間違いはないと言うのはわかった。
用心がいるのか
「お待たせしました。当店の人気のガマルガの煮込みシチューです。ごゆっくり」
そうお辞儀をして他の客の注文に行ったおっさんだった
「ガマルガ....」
ガマルガと言うのは30㎝を超えて後ろ足で高くジャンプができる生き物だ。一部の人はカエルとも言っていた記憶がある
しかし困った
ガマルガは食べたことないぞ。俺の故郷では毎年稲を食う害だったから見つけたら処分なのが常識だったせいもあり、抵抗感が生まれる
シチューにはガマルガの足が二本とも野菜と一緒にプカプカと浮いている。心なしか、シチューの色が薄い緑色にも見える
だけど食べるしかない。せっかく作ってくれた料理だ!我慢して食べようじゃないか!
そう思いながらスプーンを取ってシチューに近づけるが、掬おうとしたところで手が止まってしまう
眉間にシワを寄せながら少し固まっていたが決心してシチュー(ガマルガの足付き)を掬い上げてまた固まる。しばらくして再び口に運ぼうとして一気に口の中へと放り込む
「....」
ガマルガの足が舌につく
感触が凄くブニブニしている。シチュー事態の味は確かに美味しかった。店を出すと言う分には上出来と言ったところだが....
俺は意を決してガマルガの足を噛む。が、感触こそブニブニだったが中まで火が通っており、ガマルガの味は鶏肉に似た味がした。その事があってかガマルガに対しての抵抗感が一気に無くなった
「意外といける」
さっきまで眉間にシワが寄っていたが、ガマルガを食べてからはいつも通りの顔へと戻っていった
これは確かに店のイチオシになる訳だな。今度別のガマルガ料理でも食べてみよう
しかし虚しいものだ。たった一人で食事をするのは寂しいと言うべきだな。まあ、孤独には慣れてるし今更って感じだけどな
と、思いながら俺はシチュー飲み続けた
店内には他の者達の話し声が聴こえてくる。それにまじって食器の音や奥の部屋からは流水が聴こえる。奥の部屋は厨房なんだろうな
だけどもそれに混じって気になる話も聴こえる
「おい、さっき聞いた話だがよ、また出たってよ」
「さっきまでそれについて話してたんだよ」
「なんだ、聴いていたのか」
「噂になったるからな」
さっきも聴いたがやっぱりわからんな。噂になるほどだし誰でも知ってるいる可能性がある。ここまで聴いてモヤモヤするより聴いてみるのが一番だな
「なあ、店主さん。ここで何かあったのか?」
「なんだ?お客さん知らないのかい?」
「なにぶん来たばっかだからな」
「ああ、旅の人か」
店主は俺の姿を見て察したのか言葉を溢す
店主は腕組みをしながら俺のほうに向いて一息おきながら、また喋り始めようとする
「はあ、まあ、何て言うか....最近は何かと物騒だからな。お客さんも気を付けたほうが良いぜ?例の辻斬りに遭うから」
「辻斬り?」
店主はまるで残念な人を見るかのように俺に向かって見ている
いや、俺が残念な人じゃないぞ?
俺はと言うと、その『辻斬り』と言う単語をオウムのように返して問いかける
「ああ、この町で起きてる通り魔事件だよ。ここ最近じゃ、2日に一度は起こる。あんたも夜道には気を付けな」
「わかった。忠告感謝するよ。あ、この料理のお駄賃は?」
「400Gだよ」
聴きたかった話は聴いた。まさかこんなに綺麗な町で殺人事件が起こってるとは予想できなかったな。強いて言うなら強盗だと思ってた
俺はいつの間にか飲み終わっているシチューを見て会計を済ませようとする
所持金は3000Gだ。つまり残りは2600Gとなる
宿代がどれぐらいなのかによって、金の底をつくスピードが変わるからな、できるだけ安い宿にしないと
今思えば、自前のがあるのだがそれを食べておけば出費はかさばらなかっただろうに....
明日からは自前ので良いか
「毎度あり」
金を払って俺は飯屋を出た
飯屋を出ればそこにはまた活気ある町が広がっていた
昼過ぎでも大通りの人達の往来は変わっていない
俺は再び大通りな人混みを避けつつふらふらと宿を探し始めた
ふらふらと歩いていると市場が広がっていた
そこも人達が多くて困る。俺は人混みが苦手なんだって....
「ん?」
そこである商品が目につく
テントだ
俺はその商品名を見て凍りついた。そう、俺はテントを持ってきていない。つまり、旅に出発しても野宿になっちまう!
まさかこのタイミングで無いことに気づいてしまうとは。さっきまで金を使わないように節約を考えていたところなのに....
値段を見て更に驚愕
なんとお値段2000Gです!これを買ってしまうと残り600Gとなります
ふざけるな
「これください」
「毎度あり」
と、あっさりと購入してしまった
俺は自分の計画性のなさに驚いているよ。まさかテントがないなんて思ってもいなかった。お陰で残り600Gだぞ。これはどっかで稼がないといけないかな
と、テントを分解してかなり小さくなったのをリュックに入れて再び宿を探しに歩き始める
市場の先には大通りはなく、普通の道が続いていた
あの市場が町の中心だったんだろうか、ここからは一気に人気が減った感じがする
それでも人の数はまだ少ないとは言えないぐらいだった。子供達がはしゃいで遊んでいるのを見ていると子供にぶつかりそうになったので避けて子供が通りすぎるのを待った
「元気でなにより」
はしゃいで遊んでいる子供を見てそう思った
俺は小さい頃から友達は少なくって外ではあまり遊ぼうとはしなかったから、また子供の頃に戻れるとしたら外で友達と遊んでみたいなと思った
友達は少なかったけど
少し中央の大通りからは外れた場所に俺が目的としたいた宿はあっさりと見つかった
民家の隣建てられて、その隣にまた別の何かの建物が並んでいた
「バルカスの宿....」
名前からはなんと言うか、宿らしい宿の名前ではないと思う
でも立て札に宿と書いているなら宿なんだろう
俺はちょっと疑惑の念を抱きつつ中に入る
「意外と普通だ」
ネーミングセンスはあれだったが、中は普通の宿だ
一階はおそらく受付や食事を取るところだろう。二階からは部屋って感じなんだろうな
「いらっしゃいませ。何泊でしょうか?」
ここの宿主に聴かれて、ふとお値段をチェックする
目線だけで確認したが一泊300Gする
食事は当然別料金と言うことか....
「一泊お願いします」
そう言って手元から300Gを出した
あと300G....
それからは宿主に部屋を案内されて二階へと誘われた。最後に宿主は「ごゆっくりと」と言ってまた一階へと戻っていった
宿主はそれと同時に俺に鍵を渡し、それを使って俺は借りた部屋の中へと入る
部屋には最低限のベッド、椅子と机、タンス、窓と言った物しかなかった
俺は背負ってたリュックを机に置き、剣を壁に横にかけた
旅用のローブをタンスにしまい。ベルトがついた茶色い服が露になる。あまり服には興味がないからそんなのしかない。ただ、旅をするのにそれだと困る気もする。金があったら服を買っておこう
俺はベッドに横たわり、自分の計画性の無さに再び落ち込むこととなり、これが旅を始めての一日目の出来事なんだと実感する
と言っても、たったの半日だ。まだ時間はある。なんとかして金を集めよう。うん、それが良い
幸いなことにここフリム大陸は洞窟、ダンジョンの数は尋常じゃない数が存在する。そこを探索するなら収入が得られる
別の手としてギルドもあるがここの町ならどっかを探せば見つかるだろうけどそんな時間は無い
「よし、ちょっと休憩したら行くか」
さっき自分でそんな時間は無いと心のなかで言っていたがそんな事は忘れておいて独り言を言う
俺はベッドから起き上がって窓を開け、景色を楽しんで休もうとする。窓を開けて見ると海が視界に入ってくる。自分がさっき通った道までもが視界に入る。ふと下の方に目をやると、宿の隣にある何かの建物が見えた。よく見ると看板がそこにはあった
そこには『スイネアギルド』と書かれた看板があった
俺は一呼吸置いて....
「隣にあるのかよ!?」
と、叫んでしまった
下を歩いていた住民達は驚いて俺の方に視線が集まる
ダメだ、恥ずかしいわ
そう思って俺はそっと窓を閉じて、さっき入れたばかりのタンスの中から旅用のローブを取り出し、それを着た。剣を腰にかけ、部屋の鍵を持って俺は部屋の外に出る
てか、そんなに都合良くギルドが見つかるよ
と、思いながら出たのだった
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