フリム伝記 旅する者

@Kokatorisu3511

第一章 港編

第一話 旅

「お客さんがた、もう少し着きますぜ」


船内に聞こえる一人の男、この船の船長である人の声

その声にまじって、大海原の海の音に空には鳥、カモメだろうか、鳴き声がする


カッカッカッと船に乗ってる人達が一斉に歩き始めたり、リュックを背合う者もいれば、船内から出てくる者もいる

俺もその人らと同じように座りながら身支度をする


まず、リュックの中身からだ。中には3日か2日ぐらい保つほどの食糧と日記帳、インクと羽ペン、お金3000G(ゴールド)、それと護身用の剣

いたって普通の剣を鞘に納めて腰に掛ける。それからリュックを背負った俺は立ち上がり船の外から見え都市を見ていた


「あれがスイネア」


俺が見ていたのは目的地のスイネアと言われる港町だ


フリム大陸が発見されて最初に上陸された場所とされ、そこで港町がつくられた。それがスイネア。最初にできた町なだけあって街とも言えるぐらいの規模である


「君も旅人かい?」

「え、あ、あぁ、そうだが」


いきなり喋りかけてきてビックリした。お陰さまで変な反応をしてしまった


声をかけた人物はネズミ色の旅用に仕立てられたローブを着ていて、黒髪は短髪で落ち着いた男がいた


「やっぱり皆も来るんだね。世界一大きな大陸に、まあ僕も旅がしたくて来たんだけどね」

「フリム大陸の歴史は1000年は超えてるからな。伝説や伝承が多く、宝もそこら中の洞窟やダンジョンにあるって言われてるし、君はお金目当てかい?」

「へえ、結構勉強してるんだね。でも僕の目的は宝だけじゃないからね。僕の名前はカズマ・サカグチ、君は?」

「俺の名前はラグネット・スカイ、よろしく」


カズマが手をさしのべ、俺は自分の名前を名乗り、その手をとった

俺が立ち上がろうとした時に船が揺れバランスを崩しかけたが踏みとどまった


「大丈夫かい?」

「ああ、すまない」


そう言って俺は立ち上がり、繋いでいた手は離し護身用の剣に手を掛ける


「君がここに来た理由を聞いても?」

「俺は単に来ただけさ、特に理由なんて無い、ただ、住んでいる所とは違う所に行きたかったんだ」


俺は特に理由があってここに来たわけじゃ無い。ただ単に旅がしたかったし、興味があるだけだ。それ以外に興味は無い


「だけど、スイネアを見て感動したよ。あの町のお陰で他の景色も見たくなっちまった。そうだな、さしずめ絶景探しの旅と言ったところだ」


実際にあの町は俺が想像していた町とはかけ離れていた。町の家の屋根は色鮮やかでオレンジ、青、赤といったような色を多種多様に使った家以外の建造物にも見られ、人が活気に溢れているのを遠目でもわかるのも、俺が今回旅に連れてこられた理由になる。いや、そう言う風に理由をつくられたようなものだ


「へえ、絶景探しか!良いね。確かフリム大陸の北側にはオーロラって言うのが見れるって聞いたことがある。西には世界一大きな木があるってのも」

「俺より知識があって羨ましいよ」


何せ俺はちょっと知ってるだけだ。さっきの絶景探しの旅だってさっき決めたばかりだ。知ってるなら最初っからそうしている


「こう見えても父さんがフリム大陸の出身でね、冒険のノウハウや大陸の名所を知ってるんだ」

「おお、それは羨ましいな。俺の両親はただの町に仕えてる役人だよ」

「そっちのほうが羨ましいじゃないか」

「まさか...」


俺は苦笑いしながら答えた

役人だからって決して良い思いはしないことだってある。両親が共働きだからこそ滅多にって程ではないが会う回数は減ってしまう。だから俺はあまり両親との気持ちに向き合っていなかったかもしれない


「もうすぐ着くみたいだね。君はこれからどうするんだい?」

「そうだな、まずはスイネアに一泊して次の町を目指すよ」

「なるほどね、だったらスイネアから近い中部方面のコトナナって言う町を勧めるよ」

「そうか、そこが最寄りの町なんだな、ありがとう」


持つべき者は友と言うわけか、会って間もないのによく親切にしてくれるものだな

会話を交わしてまだ数回程度だかこいつとは仲良くできそうだ。旅の途中に遭うことがあるなら今度何か奢ってやろう


そんな事を思いつつ、船の動きは鈍くなってやがて静止する

止まる船に揺らされながらも俺はついにスイネアにたどり着く

港にはさっきまで活気のみしか見えてなかったものが、今度は人を見て再度活気がある町だと認識する


「やっと着いたか、それにしても皆イキイキしているな」

「仕事は誇りを持ってする人がいるからね。そんな人がこの町を支えてるんだよ。現にこの町の首領だって平民上がりだって話だからね」

「誇りを持って仕事をするか....」


改めて両親の事を考えたら、両親達は仕事に対しても愚痴は言うものの真剣には取り組んでいた。それに両親が働いていなかったら俺も普通の暮らしはできないままだったのかもしれな。


「旅が終わったら、家に顔でも出すか」


そう、呟いた


「何か言った?」

「いや、何も」


いかん、カッコつけ言ったら恥ずかしくなってきた!

うん、忘れよう、今は忘れておこう


俺は恥ずかしくなって赤くなった顔をカズマに見られないように横を向きながらそう思った


「あ、ほら早く降りないと僕たちが最後だよ」

「え、ああ、そうだな。皆行動が速いな」

「僕たちが遅いだけだよ」


全くその通りだ


俺達は船に降りた

降りた前には辺り一面に魚市場が広がり、そこに行き交う人や漁船から魚を運ぶ人が多くいる

港の影響か鳥がわんさかいる。船の周辺に羽を休めたり、船の頬に止まっている鳥もいる


俺達は今石畳の上にいる。石畳は人が多いのか欠けているところがあり、海が隣な為に濡れている


「そう言えばカズマさんはこれからどこに?」


あわよくば俺よりここの知識や常識を持っている人に次の町まで案内して欲しいのだ。だが向こうにも都合があるからな無理は言ってはいけない


「カズマで良いよ。僕はギルドによって行こうと思う」

「そうか、また遭えると良いな」

「遭えるさ、世間は狭いって言うしね」

「そうだな、じゃあなカズマ」

「またね」


そう言って会って間もない感動の別れをしたところで、俺は遂に一人となる

ぶっちゃけると一人ってなんだかんだ不安である


不安と思いながらも俺は石畳の上を歩き始め、魚市場の横を通る


「まずは宿か、先に見つけておいたほうが楽だしな」


まずは宿

ここらは俺達みたいに旅人も往来する場所だ。宿の一つは二つは簡単に見つかりそうだしな


歩いている途中に風が吹く

海風がの勢いは凄まじく羽織っている服が靡く

俺は風が吹くほうに向いたが勢いがあったもので手で風を遮断する。風が弱まったところで勝手に閉じていた目を徐々に開けた


「旅か....」


まだ見ぬ絶景が見たかった

しかしこの目的は思い付きでできている。そのうち本当にしたいことが見つかるまでの気休め程度の目的だと俺は思う

本当にしたいこと、それがどんな事かは今の俺にはわからない。だけどいつか見つけよう、そのための旅だと思って






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