東京の魅力
僕は変わっている人を見るのが好きだ。
それは自分では考えられないような何かを持っていたり、知らない事を教えてくれたり、自分にはない魅力があるからだ。
色々な物事を知りたいし、経験したいし、考え方を知りたいと思う僕の体質は、必然的にそういった変わってる人に魅力を感じ、目で追ってしまうのだろう。
普通でいないとダメなんだと思っている人がいるが、それは違う。輪に馴染めなかったり、変な事をしてしまう人というのは常識では測れない何か特別な才能や個性を持っているからだ。
ただ周りにその奇行を受け止める度量がある人間がいないだけで、個性というのはその人の最大の魅力なのである。
ちなみに僕も変わってる人が好きな変人の一人だ。
変人好きの僕にとって東京は魅力的な街であると信じている。
僕はスクランブルエッグ交差点の目の前まで戻ってきた。
周りを見渡すと、信号が変わるのを待っている人がさっきよりも増えている。
そして個性的な服装をしている人が大勢いるのが遠目でも分かった。
周りよりもどれだけ派手で目立つ服装を着飾る事が出来るのかというのが東京のルールと言わんばかりに強い色が多い。
交差点というパレット上に何色もの絵具があり、青のサインと共にそれらは混ざり合い、それぞれが東京を彩るワンピースとなっていくのだろう。
歩道の脇で人通りを数えるカウンターマンが朝から山ほどいたが、年齢層を調べているのではなく、きっと個性がある人がどれだけ東京に集まっているのかを調査しているのだろうと僕は推測した。
パステルイエローのジャケットを着ている僕は、東京以外では目立つと言えば目立つだろうが、東京にいる人々たちから見れば、地味な絵具だと言われるに違いない。
僕はスクランブルエッグの手前まで来て信号が変わるのを待っていた。
「あの人、気持ちわるいんだけど」
近くにいた若い女性がそう言ったので、僕もその方角を見て、反対車線に個性的な方をいるのを早速発見した。
膝上位のスカートを履いて、千鳥足でふらふらしながら信号を待っているのを見ると、朝まで飲み歩いていたのだろう。
周りを気にせず、ペットボトルを空に投げては拾うという行為を繰り返して、ゲラゲラと笑っている。
その人は無精ひげを生やし、見た感じだと、オカマなどではない。スカートを履いている小汚いおっさんだった。
おっさんは周りを全く気にせず、堂々とペットボトルで遊んでいた。
確かに気持ち悪いという気持ちも分からなくないが、僕はそんなことよりも堂々と好きな恰好をして、周りを気にせず、遊ぶことが出来るおっさんのハートを尊敬した。
「東京はやっぱ面白いかもな」
信号が青になり、他にも面白い人がいないか周りを見渡しながら歩いた。
僕はセンサーが付いているかの如く、すぐに変わった人を発見する。
次の人は身長が高く、肩幅があって良い身体をしている。全身を白一色で統一した、かなり洗練されたコーディネートだ。身長が高いので注目を集め、写真を撮ってくださいと言われているのを見ると、有名な人なのかもしれない。
彼はどっからどう見ても、バニーちゃんの恰好をしていた。
渋谷ではかなりの有名バニーなのだろうか。
何となく僕はバニーに手を振ると、こちらに気づいて笑顔で手を振り返してくれた。
「体格の良いバニーが笑顔で手を振ってくれるのはなんか怖いな」僕は正直そう思ってしまったが、きっといいバニーだと思う。
もしも、もう一度見かけたら写真を撮ろうかなと少しだけ思った。
他にもマリオとルイージの恰好している外国人カップルや、大声で「僕のリホを取ったのは誰だーー」と大声で叫びながら走っているチェック柄のシャツを着た小太りの男性。
道端で大の字になって爆睡し、パンツ丸出しになっているおばさんなど様々な変わっている人を見つける事が出来た。
やはり個性とは人を魅了し虜にする。それぞれの人が持つ最大の魅力だと改めて思った。
そして東京という土地も、色々な個性を引き寄せてしまう、何か特別な魅力がある場所なのだろう。
僕もまた東京の魅力に魅了され、引き寄せられた個性の一つなのかもしれない。
「これは東京の思う壺なのか?」などと考えたりもしたが、東京についてもっと知りたいとも思った。
僕は結局スクランブルエッグを連続で5往復くらいした。
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