銀色の奴とコーヒー


様々な人、お店、才能、想いに溢れた眠らない街。


夢に憧れ、夢に溺れ、夢に惑わされて、夢に破れる街。


お金という魔物に取り憑かれ、偽りの幸せを追い求める街。


色鮮やかすぎて、憧れはすれど、気が付けば色は混ざり、霞んでゆく街。


そんな街が今や跡形もなく、がれきの山となっていた。



「ヒューーーーー、ドカーーーン」


〈スンッ〉



「あんな強い敵、今まで見たことも聞いたこともねーよ」

「新入りはまだこねーのかよ」


「おい!ジャック!希望を持て!」

「大丈夫、何とかなるさ」

「それに例の新人は相当のやり手らしいぞ」



「そうだな、、新入りを待って、一気に片を付けよーぜ」

「そういえば、その新入りってどんな奴なんだ?」



「聞いた話だと相手を真っ二つにするのが好きな、クレイジーな奴みたいだな」



「そりゃ、期待できそうだぜ」




ここは日本という小さな島国のトウキョウという一つの街。

多くの人が何かを求めて集まってくる。

だが、集まってくるのは、人だけではない。

この街の何かに引き寄せられるように、招かれざる生物も集まっていた。


そしてトウキョウには、一般人に決して知られる事のない秘密の組織が存在する。


忠犬ハチ公の下にある隠し階段。

109のエレベーター天井を開けるとある隠し通路。

トウキョウメトロ線のホーム下にある隠し扉の奥。


そんな想像できない場所に拠点を置き、その組織は活動をしている。

得体の知れない生物や、誰も説明できない不可解な現象の原因を探知し、対処する。

誰にも気づかれることなく、トウキョウを守り続けている裏のヒーローだ。


僕は身体能力を買われ、その秘密の組織の戦闘員をしている。

同僚には透明人間や、高さ3mを軽く超える嬢王蜂、言語を巧みに操る恐竜の子孫など、少し変わった仲間たちと日々トウキョウを守る為に活動している。


そしていま、ある生物の侵略により、トウキョウは危機に直面している。

奴らは空から球体の乗り物でいきなり現れ、身体は銀色。

人間や動物、爆弾など見たものに化ける事ができるらしく、

「ワーレーワーレーハー」などとふざけたしゃべり方をしている。

そしてどうやら不死身らしい。

爆弾に変身して、仲間諸共あたり一面を吹き飛ばすのを何度も見せつけられた。

吹き飛ばした後はまるでいつもの喫茶店でコーヒーを楽しんでいるかのような、

落ち着いた顔で〈スンッ〉と起き上がってくる。


僕らは絶賛戦闘中なのだが、状況は最悪だ。

100人いた仲間たちはほとんどが破れ、

残る仲間は化け猫のジャックと僕。

そしてまだ到着していない新入りの3人だけとなっていた。

ジャックと僕はビルの陰に身を潜め、新入りの到着をずっと待っている。


そして今、遠くを見るとこちらに向かって走ってくる男が見えた。



「お待たせしました。あんな弱そうな敵に情けないですね、あなたたち」



「おせーよ!!もう俺らしか残ってねーんだぞ」



「私の相棒が機嫌直してくれなくてね、もう諦めてそのまま来ちゃいました」



「なんじゃそりゃ!もういい!一気に行くぞ」



「そろそろ機嫌直して下さい。あなたがいないとダメなんですから」


「ブルゥゥゥン、ブルゥゥゥン、ブィィィィィイーーーン」


「やっと機嫌直してくれましたか」

「晴れていますが、今日は血の大雨を降らせましょう」



「よく言うよ、早速お前の力を見せてくれ!ジェイソンJr!!」



「ここから一気に形成逆転だ!いくぞー!!」



「ブルゥゥゥン、、、、、」



「え、、、、、、、、、」



「すいません、また機嫌悪くなっちゃいました」




「ヒューーーーー、ドカーーーン」



今となってはの話というか。何というか。

正直な事を言えば、勝てる訳がなかった。


「無理でしょ。不死身なんだもん。それはずるいって」

「何しても無駄じゃね?3人で戦う前から薄々結果分かってましたよ。はい。」

「だってその前に97人やられてるんだもん」

「ジェイソンJr来たところで戦況変わるわけないでしょ」

「てかそもそも相棒ならエンジンの整備しとけっての」

「整備してたらそれこそ戦況変わってたかもしれないわ」

「まぁそんなこと今更言っても意味ないんだけどさ」

「今思えば、ゴジラ風怪獣とかぬらりひょんとかまだ可愛い奴らだったんだな」

「なんだよ、今日が最後の日かよ、あっけないなー人生」

「まぁでも最後に強敵と戦えて楽しかったな」

「初めての相手にしてはよくやったほうだべ」


僕は案の定、爆発に巻き込まれて、身動き一つとれない状況になっていた。

死ぬ間際だからか脳内だけが、普段の何倍ものスピードで回転していた。



〈スンッ〉



「うわー、また懲りずに立ち上がって近づいてくるよ」

「コーヒー美味しかった?って聞いてやろうかな」

「さすがに言葉は理解できないか」

「ワーレーワーレハとか言ってたしな」



「大丈夫?私はギリギリ爆発から逃げられたよ」



「おぉ、ジャック。お前は助かったみたいだな。ジェイソンJrの奴さっさと逃げちまいやがったよ」



「そうだね、あなたも逃げてたらよかったかもね」



「確かにな」

「てかジャック。言葉使いジェイソンみないになってないか?」



「グサッ」



「、、、、、、」



「そうゆうこと、か」

「コーヒー、、、美味し、かた?」


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