初めての春に
斉 光一郎
はじめに
人は歳を重ねるごとに初体験といううぶな体験をする機会を失い、その時味わった感情は時間と共に失われていく。
初めて小学校に行った日のドキドキやワクワク。
初めてのアルバイト面接で感じる緊張感と初出勤の不安な気持ち。
初恋をした時の胸の奥がギューっと締め付けられる感覚。
ファーストキスの何にも代えられない達成感と大人の階段を登ったという実感。
初体験のそれぞれが感情の一番最初のページに刻まれ、一番印象に残りやすい体験となる。
人は日々初体験を繰り返し、色々な感情を手に入れ、人間味を増して成長していくのだ。
だが、人は同じ経験を繰り返す度、少しずつ少しずつ感情と想いが薄れていく。
まるで知らず知らずのうちに北極の氷壁が溶けてなくなっていくように。
『初心に戻る』という言葉がなぜあるのか考えた事はあるだろうか。
それは無意識のうちに、人間は色々な出来事に慣れて、忘れてしまう生き物だからだと僕は考える。
人に何かをして貰った時、「有難う」と感情込めて言うが、回数を重ねるごとに慣れてしまう。言葉だけが無機質に出ていくようになり、だんだん気持ちがこもらなくなる。
最終的には感謝の言葉も出なくなり、してもらうのが当たり前となるのだ。
コンビニでよく見る光景がいい例だと思う。
いい接客に慣れ、常識や当たり前に囚われている人々は、無愛想な店員には明らかに嫌な顔をしたりする。
「金払ってるんだから、客は神様だ」とか
「いい接客をするのが当たり前だ」などとドラマの悪い客が言うセリフがあるが、もし言っていないとしても、態度に出していたとしたら、言っているのと大差はないのではないだろうか。
僕は『初心に戻る』よりも『初心を維持する』ように心掛けている。
色々な出来事に興味を持つことで、新しい発見をするきっかけを作り、何てことない毎日に初めての体験を探し続けていく。人生は一生青春なのだ。
この話は僕のとある一日の出来事。僕が興味を持とうとする所と、初めての体験を一緒に楽しんで貰えたら嬉しい。
「見た目は大人、心は子供 その名は僕だ」
こんなダサいセリフでも自信を持って言えるのが僕の良いところだと自負している。
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