真夜中のあわせ鏡
白鷺雨月
第1話真夜中のあわせ鏡
深夜0時ちょうどにあわせ鏡をすると悪魔があらわれるという迷信というか都市伝説みたいなものがある。
私がどうしてそんなことをやろうと思ったのかは悪魔を呼びだして、ここではないどこかに連れていってもらおうと思ったからだ。
まあ、たぶん、それは迷信にしか過ぎずに何者もあらわれないのだろう。
そう思いながら手鏡を二つ用意し、私はかべの時計を見ながら針がちょうど0時を指すころを見計らって、あわせ鏡をした。
ためしに鏡をのぞいてみる。
そこには無限とも思われる数の私が写っている。
さえない、地味な私の顔だ。
なんだ、何もおきないじゃない。
やっぱり迷信だったんだ。
私は二つの手鏡を机におこうとしたとき、突如、にょきりと手鏡から腕が生えた。
その腕は何度も見たことがあるものだ。
それは私の手だった。
見慣れているはずだ。
その手は私の手を握る。
暖かい、人の手だった。
力強く握られ、ちょっと痛い。
ぐいっと握るその手は私をつかみ、鏡から出ようとしている。
私はためしにその手を力を込めて、引っ張ってみた。
そうするとどうだろうか、不思議なことにぬるりと小さな手鏡からもう一人の私があらわれた。
手鏡からあらわれたもう一人の私はう~んと背を伸ばすと私を見た。
「やあ、こんばんは。私はいつも鏡で見ているもう一人のあなたよ」
と彼女は言った。
なるほど、鏡の中の人物か。
私の左目尻にほくろがあるが彼女は右の目尻にほくろがある。
左右対照になっているのか。
「あなたは私なの」
私は訊いた。
「そう、私はあなた。これからよろしくね」
鏡の中からあらわれた彼女は言った。
それから私と鏡の中の彼女との共同生活がはじまった。
彼女は私と違い社交的でおしゃれだった。
私といえば人見知りで地味。
まったく逆だ。
彼女が外にでるとたちまち友達をふやして帰ってくる。
私が外に出るとなんか昨日とぜんぜんちがうわねと言われる。
姿かたちは瓜二つだが、鏡の彼女と私は正反対であった。
そうなるとなんか外に出るのが億劫になっていく。
鏡の彼女に任せて、私は部屋に閉じこもるようになっていた。
ある日の深夜、風呂あがりに髪の毛を乾かしながら鏡を見ていると手鏡を持つ自分があらわれた。
瞬く間に私が増えていく。
そうするとどうだろうか、私は鏡の中に吸い込まれてしまった。
鏡の中に吸い込まれて、もがいているとどうにか小さな出口のようなものをみつけた。
私はどうにかそこにだどりつき、手をのばす。
そうすると誰かが私をつかみ、引っ張りだしてくれた。
外に出た私が見たのは驚いた顔をした私自身であった。
真夜中のあわせ鏡 白鷺雨月 @sirasagiugethu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます