第55話 タコ要塞

「Hey Hey! ようこそ、私達の城へ!」


超ハイテンションで出迎えてくれたのはシャーロンだ。相も変わらず熱すぎるオーラでアヤ達は少し警戒が緩む。


「時にアヤとリンゴ。私達の城の住み心地は如何なものかな?」


シャーロンの言う城は簡易ではあるが程整った内装で広さもそれなりにある。飛ぶ浮遊要塞自体に驚くのも無理はないが、これがのだからさらに驚愕だ。


「なんか湿っぽいかな」


アヤは素直な感想を述べるとシャーロンは笑顔で「生きてるからね」と答えた。


「この床食べれたりする?」


リンゴは冗談っぽく言うとシャーロンは笑い転げて床を叩きながら答えた。


「ははは! リンゴの発想はぶっ飛んでて面白いね! でもこの床召喚物扱いだから食べれないんだ。まぁできたら無限たこ焼きになっちゃうからバランス調整されてるんだけどね!」


シャーロンは笑いを全て吐き出して、すぅーと息を吸い呼吸を整えてニッコリ口元を緩ませる。


「さて。アヤ達が来たことだし、グリフォン騎士団を倒しに行くぞぉー!」


「ちょ、ちょっと待って。グリフォン騎士団ってこのフィールドにいるの?」


私はそう聞くとシャーロンは軽く頷いて話を続けた。


「万年二位のジャックと戦ったからね。グリフォン騎士団がいるのは確実だよ」


ジャック? えーと……あ、思い出した。殲滅姫って呼ばれたあの時にいたタケノコ? みたいな髪型の人ね。


「ジャック……タケノコみたいな髪型した人ね」


「YesYes! そのタケノコが偶然仮拠点に攻め込んできてさ。たった一人なのに食料三割くらい奪われて、しかも全滅寸前まで追い込まれて、ネクロの起点がなかったら確実に終わってたんだよ」


アヤはシャーロン達が全滅しそうになったことに驚くと横からリンゴが説明してくれる。


「万年二位のジャックは、何も知らずに戦ったらまず負けるくらい強い。アヤもライジンもそうだけど、動体視力が尋常にヤバくて、初見殺し以外ならどんな攻撃も見てから避ける」


「そうかな。でもリンゴも回避できてるよね」


「私は計算して、攻撃の軌道を予測して、避ける。相手の動きを予測して、避けることは出来ない」


そ、そうなんだ。計算で回避できるんだ。


「アヤ達も凄いけど、ジャックも超人かってくらいに避けられたよ。しかもレディー相手なのに手加減なしだから紳士のしの字もなかったんだ」


「誰かさんに倒されたのが、よっぽど悔しかったのかな」


二人の視線が私に向いて、なにかしたっけと首を傾げると二人は首を横に振って小さく鼻息をつく。


「まぁそんなことよりグリフォン騎士団の拠点探しだよ。こうやって空からの方が一番手っ取り早いと思ってね」


「逆に見つけられそうだけど」


「アヤちゃん、いい線いってる。そう見つからないなら見つけてもらえ作戦で奴らの拠点を探しているのさ。そして空中から触手攻撃の嵐! 相手は何もできずキルされるってね」


「へぇー。でも撃ち落とされたりとか」


「ははは! ネクロの固有スキル〈虚構きょこうなる混沌こんとん〉はそんなヤワじゃないよ。何せ万年二位から逃げれるスピードを持ってるからね」


ネクロの固有スキルは聞いたところによると異界の神を一体、ランダム召喚するという。

全部で六種類いるみたいだけど、能力が様々でどれもピンキリな召喚モンスターばかりらしい。


「ちなみにこの子はスピードと攻撃力と汎用性を兼ね揃えた当たり枠だよ」


「シャーロン、私の召喚モンスターにハズレはないよ」


ちょっと怒り気味なのか、ネクロの眉は少し曲がっている。


「Sorrysorry. ネクロちゃんの召喚モンスターは一癖二癖あるからつい」


「もう。シャーロンは白黒つけたがる癖があるから早めに直してね」


ネクロは離れて空いた隙間からフィールドを眺めることにした。


「えーと、どこまで話したっけ」


「たけの……ジャックから逃げたところまでだよ」


「あ、そこそこ。ジャックから逃げれることに成功できたのはネクロちゃんとフェルちゃんのおかげなんだ。二人には感謝雨あられせんべいってね!」


アヤとリンゴの顔はキョトンとしていて、シャーロンはコホンっと息を整える。


「とりあえずアヤ達にはグリフォン騎士団の拠点を見つけ次第、場を乱してほしい。ああ、死にそうになったら逃げてもらって構わないから無理に戦わないように!」


「ホワイト企業の鑑」


「へへ、クラメンを大切にしなきゃクラマスやっていけないもんでね」


「我らのクラマスも何か言ってやって」


「どうも。半ば無理やりクラマスされたクラマスです」


私達は談笑を続けていると、突然床が大きく揺れて床に手をついた。


「What!? 何が起こった!?」「え!? なにがどうなってるの!?」


シャーロンとアヤの声に反応したネクロが触手に掴まりながら大きく声に出す。


「どこからか魔法で攻撃された!」


「そんなバカな!? グゥワちゃんの固有スキルで魔法攻撃と物理攻撃は激減してるはずなのに!?」


「くらったのは確かだよ! 画面に焼き丸のHPが四分の一減ってるから!」


「Holy shit! 至急グゥワちゃんにバフかけるように連絡して!」


「訂正。場が乱れたのは、私達の方だった」


「どうしてそんなに冷静なのリンゴ!?」


この場で冷静になれるのはリンゴだけだろう。何せリンゴは攻撃した相手が誰なのかを知っているのだから。

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超人気アイドルですが、VRMMOで殲滅姫と呼ばれています 冬油はこ @Toyuhako

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