隠し子、王子になる?(女誑しの隠し子)

龍淳 燐

第1話

 俺が現国王陛下の隠し子であることが王国に、国王陛下にバレた。

 せっかく隣国で同盟国でもあるアルスティン公国での留学ライフを満喫していたのに無理やり連れ戻される羽目になったのだ。

 しかも王族警護の専門部隊の近衛騎士団第3大隊が派手に御迎えに来たもんだから、公国にも王国から使者が来て事情説明をしたらしい。

 俺の立場が完全に隣国にもバレたわ。

 チクショウ。

 たぶん考えが声に出ていたのだろう。

 シルフェスが睨んでくる。

「へぇ~、留学ライフを満喫ですか? ほぉ~、貴族令嬢たちを口説いて国王陛下が貴方のお母上様にしたことと同じようなことをしておいて、よく言いますね」

「いや、俺はちゃんと婚約者のいないご令嬢しか口説いてないし? 避妊してたし? 泣かせてないよ? それに地位や権力なんて使ってませんよ?」

「確か、公女殿下も口説いてませんでしたか?」

「そうなんだよ、あともうちょっとで落とせたんだけどなぁ……」

 ふと目の前にいるシルフェスから殺気が飛んでくる。

「あっ、違いますよ。 僕はシルフェスさん一筋ですよ(冷汗)」

「どの口がいいますか! この女誑しが! 女の敵が!」

 シルフェスがジト目でさらに睨み付けつつ、口撃してくる。

 いいやん、多少なりとも国王陛下へ当てつけしたって~。

 公国に国王陛下の血を引くお孫さんが沢山いたってさ~。

 あ! シルフェスめ、嫉妬してるな~。 可愛いやつめ ぐへっ

 シルフェスに殴られた。 痛い……。


 まじめな話、何処で隠し子である俺の情報が王国側にばれたのか。

 国王陛下があの当時何人のメイドに手を出したのかが解らないからなぁ。

 可能性のある人は、まあ絞り込めるけどね。

「ところでさ、シルフェス」

「何ですか?」

「どんなことがあってもシルフェスは俺の嫁さんにするから、覚悟してね」

 とウィンクすると、シルフェスは頬を赤く染めながら顔を背けてブツブツと何かを呟いていた。

 何だかんだで、一番の難攻不落は目の前にいるシルフェスだったりするんだから始末に負えない。

 もう口説き始めて6年にもなるんだよ。

 告白しても、はぐらかされるわ。

 本気にしてもらえないわ。

 プレゼントは受け取ってもらえないわ。

 甘えても無視されるわ。

 夜這いしたら、しばき倒されるわ。

 いい加減グレるぞ、まったく。

 取り敢えず、明日の国王陛下との面談に備えて寝るとしますかね。



 次の日

 再び近衛兵に先導されて、王城のこじんまりとした会議室に案内される。

 そこには国王陛下とその右隣に正妃様、そして左隣にいたのは……。

「お袋!?」

 そう、俺の母親が座っていた。

 しかも、笑顔でこちらに手を振ってきやがった。

 ほおほう、裏切り者はアンタだったのかよ、お袋。

 睨めつけたら、顔をそらしやがった。

 言いたいことが山ほど出来たが、取り敢えず今は国王陛下の話を聞こうじゃないか。

 多少態度が悪いが、ドッカリと用意されていた椅子に座った。


 オホン、と国王陛下が咳払いをする。

 うん、敢えて「父上」とか「お父さん」とか呼ばない。

 ひねくれているとか言わないでほしい。

 そんなのは理解している。

 本心から呼びたくない。

 だから、国王陛下でいい。

「昨日の王太子の件は考えてくれたか? アルフリードよ」

「だから、行き成り王太子とか訳わかんないだろうが。 それに正妃様のご意向をお伺いもせずに勝手に決めるのはいかがなものでしょうか。 国王陛下。 大体誰から俺があんたのっと、国王陛下の息子だって言ったんだよ」

「それはもちろん、お前の母親であるフローリアともう一人シルフェスからだが?」

「はあ?」

 うわ~お、身近なところにも裏切り者がいたよ。

 それにしても、なぜシルフェスが?

「お前、隣国で自分が何をしてきたのか判ってるのか?」

「留学?」

「なぜ疑問形なのだ! この馬鹿者がぁ~!」

 国王陛下から雷が落ちたが、大したことはない。

 一番のショックは、シルフェスが裏切っていたことだ……。

 何故だ?

 いや、まあ、俺があまりにも女遊びが過ぎていて、シルフェスが苦慮していたのはわかる。

 だけどなぁ~、王子になったりしたらシルフェスと結婚できないじゃん。

 ましてや、王太子や国王になんてなったら絶望的……。

 うん、逃げよう!

 シルフェスを攫って、何処か遠くの国に逃げよう。

 そう決意した時、正妃様が扇で口元を隠しながら発言した。

「そうはいきませんよ。 近衛兵、彼女をシルフェスを連れてきなさい」

 警護の近衛兵に命じると即座に会議室の扉から出ていき、しばらくするとシルフェスが近衛兵に連れられて入ってきた。

 そして、そのまま正妃様の後ろに立つと爆弾発言をしたのだ。

 あっ、これ逃げられないやつやん。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隠し子、王子になる?(女誑しの隠し子) 龍淳 燐 @rinnryuujyunn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る