第44話 森の洞窟
その夜、シユはなぜか、ギケイと二人、森の奥の洞窟にいた。
叛乱軍を撹乱するため、王都を出たところで、一団は散り散りになった。
迎え撃つのではなく、今は身を潜め、朝が来るのを待つようだ。
明日には戻れると言うが、本当だろうか。王府は今、どうなっているだろう。
ここまで来る道中、シユは、ギケイが帯剣していないことに気づき、驚いた。
それに今は、二人の側近しか、引き連れていない。
ギケイは、ようやく火を起こすことに成功した。
身を隠すには、火を起こさない方が何かと安全ではあるが、だいぶ冷えて来た。
パチパチと、木のはぜる音がする。そこへ、シユの腹がグーッと鳴った。
「これを舐めるか?」
ギケイは白い布を広げ、シユに差し出した。見たことのない食べ物だ。
いくつかあるうちの一つを取り、ギケイはシユの口元へ運ぶ。
しかし、シユは口を固く結んで、拒否した。ギケイは、フッと笑みをこぼした。
「鳥たちが騒いでいます。敵が近くまで来ているかも知れません」
洞窟の外で、周囲の様子を伺っていた側近の一人が、報告にやって来た。
その側近は、シユを馬に乗せた者ではない。体つきは華奢で、一見、文官のようだ。
「迎えだ」
ギケイは、シユに与えるはずだった飴玉を、自分の口に運び、真逆のことを言った。
こんな奥深い森に、誰が迎えに来るというのだろう。
「お前がいるから来る」
シユは、訝しげにギケイを見た。
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