第43話 叛乱軍

やはり、そうだったのだ。シユは今一度、香炉を眺め、考えた。


先日、ギヨウが少し焦っているように見えたのは、気のせいではなかった。


それにしても。自分には効かないのが不思議だ。シユはちらりと、横を見た。


テイカは視線を感じ、シユを見返す。何かを企んでいる顔つきだ。


その時、突如、爆音と共に、低い声が重なるように響き渡った。王府の方角からだ。


「行くな」

テイカの言葉を無視して、シユは東門の方へと走って行く。


追いかけようとするも、横の路地から数人の男が現れ、テイカは足止めされた。


身なりは、国王直属の近衛兵、と言ったところだ。何故、味方に剣を向けられるのか。


男たちは、殺気立っている。テイカは仕方なく、剣を抜いた。


勝負はすぐについた。しかし、左の上腕を負傷した。


生暖かいものが、地面へぽたぽたと流れ落ちていく。


シユは、通りで騒ぐ民衆たちに行く手を阻まれ、まだ、テイカの視界の届く所にいた。


「どけ、そこをどけ」

遠くで、複数の馬の足音ともに、怒鳴り声が聞こえた。


人々は急いで、両端に寄って道を空けた。そこへ、騎馬の一団が通過してゆく。


後方の一騎が減速し、シユに近づくのが見えた。浅黒い肌の大男だ。


見覚えがある。ギケイの側近の一人、と以前、リゥユエが言っていた。


男は、斜め下に腕を伸ばし、軽々とシユを馬上へと抱え上げると、勢いよく駆け出した。


テイカは後を追ったが、途中で力尽き、地べたに座り込んだ。

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