第42話 訪問
シユは、離宮で手に入れた小さな香炉を携え、ハク家を訪ねた。
「あげた服、着てくれてるのね」
ハクインの母は、嬉しそうに言った。
「もうすぐ終わるから、部屋で待ってろ」
屋根の上から、ハクインの声がする。
ハクインは家にいる時、屋敷の修繕や庭木の剪定を、強制的にやらされている。
シユは、一人でハクインの部屋へと向かった。相変わらず、部屋は汚い。
寝台の下を覗くと、鈍い輝きを放つ長剣が、無造作に投げ込まれている。
この間の模擬戦で一位になったと聞いて、シユは驚いた。
賞金欲しさに、本気を出した。皆がそう言っていた。こんな形で貸したお金が戻るとは。
シユは香に火をつけ、書棚の奥から書物を取り出して、寝転がった。
書物の体をしているが、中身はエロ本だ。ハクインの部屋に来ると、いつも見る。
部屋に入るや否や、ハクインは呆れた顔をした。床でシユが寝ている。
しかも、この匂い。この中で、平然と寝られるシユが凄い。
シユを抱き上げ、寝台まで運ぶ。先に自分が寝台に座り、シユを体の上に載せた。
足をバタバタして、シユを起こす。突然の縦揺れに、シユは驚いて目を覚ました。
離れようとするシユを、後ろから片腕で抱え込む。同時に、衣服越しに下半身に触れた。
シユは、後ろにいるハクインを、斜めに見上げた。
ハクインの手が、あらぬところを擦っている。力が強くて、少し痛い。
「こんな香を持って来て、襲われに来たのか?」
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