第38話 つるつる

シユが連れて行かれたのは、後宮の奥にある建物の一室だった。


この離宮の存在は、あまり知られていない。シユは知っていたが、入るのは初めてだ。


シユは、これから起こることに興味津々といった様子だ。


だが、ギヨウが蝋燭に火をつけ、部屋の中が明るくなった途端、表情を曇らせた。


いつもと違って、荒々しい手つきで、服を剥ぎ取られる。


ギヨウの握力は凄まじく、掴まれた箇所はどこも痛くて、シユは顔を歪ませた。


ギヨウは、もの凄く怒っている。怒らせるのが目的だったのに、シユは怖くなって来た。


隙をついて、出口の方へと走り寄る。しかし、閂が開けられない。


「裸でどこへ行く?」

ギヨウは、シユの首を後ろから片手で掴む。


細い首は少し力を込めれば、簡単に折れてしまいそうだ。


すぐに手を放し、代わりにシユの腰へと腕を回す。


丸い寝台の中央に運び、跪かせると、天蓋から降りている紐に、シユの両手を結んだ。


その時、扉の外から声がした。

「ギケイ様から贈り物です。入ってもよろしいですか?」


「…入れ」

ギヨウは、少し間を置いて答えた。


色白の少年は、手のひらに木枠に入った小さな香炉を載せている。


「珍しいお香ですよ。いい香りなので、試してみてください」


そう言って、少年は、手前にある机の上に香炉を置いた。


「この子が、ギヨウ様の子猫ちゃんですか。まだ、生えてないんですね。可愛いな」

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