第37話 不満

リゥユエは潰れるまで飲み、二人は、リゥユエを支えながら、帰って来た。


門限を過ぎていて、王府に入れなくなり、門の外の石段に座り込む。


こんなことをしたら、リゥユエに叱られるところだが、幸い当人は意識がない。


少しして、門兵が門を開けてくれた。中には、長身の男が立っている。ギヨウだ。


表情は固い。シユは、そんなギヨウの脇をすり抜けて、歩いて行こうとする。


「待て」

ギヨウは、振り返ったシユの顎を、掴んで持ち上げた。


首に、赤い痕が散っている。誰かに吸われたような痕だ。


「リゥユエを部屋に運べ」

ギヨウは、斜め後ろにいるテイカに、指示を出す。


テイカは頷き、リゥユエを抱き上げ、東殿の方へ向かった。


シユは、すぐにギヨウが気づいたことに満足げで、ギヨウの反応をじっと見ている。


さきほど酒楼で、酔って悪戯して来る青年がいて、成り行きに任せた。


ハクインの首は、虫刺されかと思っていたが、こういうことだったのだ。


「何をした?」

自分に見せるために、わざとやったのだろう。ギヨウは拳を握りしめた。


こんな形で不満をぶつけて来るシユが、憎らしく感じられた。


目の前の男を誰だと思っている?


無視してやるか。相手にされなければ、シユは落胆し、二度と同じことはしないはずだ。


それか、この愚かな挑発の代償を、シユに存分に払わせてやってもいい。


それが本人の望みであるならば。

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