第36話 変わらないもの
何も変わらない。そんなのを信じるのは、シユだけだ。
小舟の上から、リゥユエは、移ろい行く河畔の景色を眺めていた。
獣騒動は落ち着き、王都は平穏を取り戻しつつある。隣国にも動きはない。
黒幕は近いうち、粛清されるに違いない。しばらく、内政はごたつくだろう。
岸辺に着くと、真っ先にシユが、舟から足場に、飛び移った。
このところ、色々と仕事を手伝ってくれるので、大助かりだ。
いつまでも子供だと思っていたが、ほんの少し会わない間に、変化していた。
大人というより、男になって来た。喉仏が出て来て、声も低くなった気がする。
「まだ帰りたくない」
そう言うと、シユが困った顔をして、こちらを見た。
ギヨウが一目惚れするくらいだから、シユの母は、さぞかし綺麗だったろう。
シユが女の子なら、何もかもが違ったのかも知れない。
王位を譲ることなく、シユを正妃に据えて、世継ぎを産み、幸せに暮らした?
でも、それはそれで、シユに嫉妬するか。
リゥユエは、心の中で笑った。
空は暗くなりかけている。
「先に帰ってて」
リゥユエはそう言って、シユの背後にいるテイカを見た。
一対一で勝負して、テイカはハクインに負け、今はハクインの犬、らしい。
シユの護衛に戻れと言われ、ギヨウもそれを承諾し、再びここにいる。
シユは、リゥユエの後ろをついていく。その後ろを、テイカが続いた。
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