第35話 賞金

ギケイは、賞金を受け取りに来た猛者たちを、高座から眺めている。


受け取って、そのまま帰ることもできるが、

余興を用意した。


これから実施する模擬戦で、勝ち抜いて上位に入れば、さらに賞金を上乗せする。


腕に自信のある者たちは、進んで、模擬戦への参加を表明した。


より高額な報酬のため、自身の名誉のため、軍に入るため、動機は様々だ。


見物席では既に、指揮官クラスの上級武官たちが、開始の時を待っている。


そして、西域から王府に到着したばかりのギヨウが姿を現した。


先行部隊が帰還したのは、ひと月ほど前だから、だいぶ時間差がある。


ギヨウは、前方にいるギケイを一瞥した。早く帰れと、早馬が飛んで来た。


ギケイが顎で、自分が座っているのとは反対側の高座を指す。見ると、席が二人分ある。


その時、闘技場の入り口付近で、どよめきが起こった。女が現れたからだ。


ギヨウは、ようやく状況が飲み込め、婚約者を迎えに行った。


知らなかったからといって、恥をかかせるわけにはいかない。


二つ置かれている椅子の片方に座らせ、自分はその隣に座る。


そこへ、模擬戦開始を知らせる鐘の音が、大きく鳴り響いた。


ギケイは二人を見て、笑みを浮かべた。このような日が来るとは思わなかった。


夫のゴフが育てたシユをよこせ、出来ないのなら、ひ孫をよこせ。


ギヨウを突き動かしたのは、ゴ家の当主であり、ギヨウの祖母だった。

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