第34話 男の子

「さてさて、シユちゃん。お風呂入りましょうかね」


ゴフの屋敷で働く三人の下女は、その後、揃って絶句した。


女人が着るような柄の服を着ていたし、顔立ちも女の子に見えた。


後ろの棚にはギヨウが買って来た、女児用の服も積まれている。


三人は、互いに顔を見合わせた。

どういうこと?


湯浴みを終えると、ひとまず女児用の服をシユに着せた。


大きな黒目が、不安そうに三人を見上げている。言葉は話せないそうだ。


この子を自分好みの女性に育てて、将来、側室にでもする考えなら。


男の子だと分かったら、どうなるの?

また捨てられてしまうの?


「シユちゃん、どうしようかね。しばらく女の子として過ごそうかね」


ギヨウは父王に呼ばれ王府へ行き、数日、屋敷へ戻って来なかった。


戻って来た時、背負った傷の痛みも一瞬忘れ、驚愕した。


まだ小さいのに、シユは厚い化粧を施され、遊女のような出立ちをしていた。


慌てて、紅を拭き取り、重そうな髪飾りや派手な装飾品を外す。


くらりとするほど強烈な匂いも、消し去りたいが、夕暮れ時は皆、忙しい。


ギヨウは自分で湯を用意して、シユの服をサッと脱がせ、桶の中に座らせた。


全身に湯を掛け、それが終わると、抱き上げて、拭いていく。


ふと、ギヨウの視線は、一点で止まった。

まさか。


直ちに、机の上にシユを仰向けに寝かせる。

そして、恐る恐るシユの股を開いた。


これはどう見ても、男の子だ。







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