第28話 雑木林の刺客
テイカは、まだ眠っている女を起こさないよう、そっと寝台を抜け出た。
今日は鏢局の仕事がある。早朝、王都を発ち、西へ向かう予定だ。
積荷の内容は、聞かないのが慣習だが、聞かなくても、生き物を運んでいると気づいた。
鼻息の荒い、獰猛な何かだ。覆い隠しても、気配までは消せない。
翌日。断片的な情報の寄せ集めで、状況が分かって来た。
西域から帰還する国の中央軍が、もうすぐ、この雑木林の細道を通りかかる。
先行隊には、たいていギヨウがいて、腕の立つ武官たちに囲まれている。
武官の中には、貴族出自の者もいる。狙いはギヨウと貴族。ひっくるめて?
とすると、黒幕は新興勢力か、あるいは他国の間者か。
やれやれ。報酬の高い仕事は、やはり裏がある。途中で雲隠れするか。
周囲に、自分とは気付かれていないのが幸いだ。髪を切り、見た目を変えた。
予想は的中し、雑木林の中から、何十もの刺客が現れ、中央軍の騎馬に襲い掛かる。
そして、その刺客の一人が、自分にも襲いかかって来て、テイカは剣を構えた。
雇い主は、報酬を支払うつもりがないようだ。口封じもしたいのだろう。
中央軍は、西域からの帰途にあり、疲労も溜まっているはずだ。
にも関わらず、数に勝る刺客を、次々と倒して行く。
流石にこの敵を、全部一人で片付けるのは無理だ。助かった。
安堵したのも束の間、テイカは、あの荷台が解かれていることに気づいた。
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