第27話 初めての

シユは夢を見ていた。母がしゃべりかけるが、何を言っているのかは理解できない。


頭を撫でてくれるのだが、途中から、撫でているのは、ギヨウだと気づく。


シユは寝ぼけまなこで、ギヨウの後ろをついて行く。戸が開き、思わず後ずさった。


この屋敷のどこに、こんなに人が居たのか。長方形の食卓を、大勢が囲んでいる。


上座には双子が座っていた。王家の人間は皆、高身長なのに、この二人はちびだ。


末端の席に、ギヨウは腰をかけた。シユは、その隣に座る。


刹那、臣下が呼びに来て、ギヨウが少しの間、中座した。


シユはこっそり、ギヨウの席の飲み物と、自分の席の飲み物を入れ替えた。


ギヨウが戻った時、宴は始まっていた。目の前の銀器を手に取り、酒を呷る。


だが、それは酒ではなくお茶で、ギヨウは眉を顰めた。


隣のシユが、同じ形の器を口にあてて、じーっと自分を見ている。


飲み物を含み、シユの頬がゆっくりと膨らんでいく。ギヨウは、はたと気付いた。


「何を飲んでいる?」

咄嗟にシユの方へ手を伸ばすも、届く前に、シユは、ごくんと飲み込んだ。


シユの顔がみるみる、険しくなる。ギヨウは呆れた表情で、シユを見つめた。


シユの母、シェンリュは、一滴も飲めないほど、酒が弱かった。


父親の情報は無い。だが、シユの見た目から、大酒飲みの大男、ではないだろう。


シユは案の定、吐き戻し、ギヨウが一晩中、介抱することになったのは言うまでもない。

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