第23話 惑わされる
後宮は、騒然となっていた。ギヨウが現れたからだ。
書簡を送らなかった者さえ、自分が選ばれるのを切望していた。
ギヨウは、迷路のような廊下を渡り歩き、各部屋を順に確認して行く。
その中に一人、透けるほど薄い夜着を纏い、こちらに背を向ける女がいた。
ギヨウは静かに、その部屋へと入った。女は、目隠しをされていた。
ギケイの茶番に付き合うつもりは毛頭ない。なかったが。
三つ編みで髪を結い、女物の下衣を纏うシユは、怪しげな色香を発していた。
ギヨウは混乱した。これはシェンリュでもない。誰なんだ?
シユは後ろを向いたまま、寝台の上に四つん這いの姿勢を取る。
そうしろと、言われているのだろう。ギケイと何か、駆け引きをしたのだ。
背中を弓のようにしならせ、形の良い小さな尻を、高く突き出す。
この先も続きがあるのだろうが、ギヨウは我慢ならなかった。
シユの片足を掴むと、力任せに引き摺り、シユの体を起こした。
目隠しを外してやると、シユが驚く様子もなく、ギヨウを見る。
その刹那、ギヨウの左手が、シユの頬へと飛んだ。もの凄い音がした。
頬を打たれたシユは、ギリリと奥歯を噛み、ギヨウを睨みつけた。
拳を握り締め、ギヨウに殴りかかる。そんなシユの腹に、ギヨウは一撃を見舞った。
崩れ落ちて行くシユを布団にくるむと、肩に担ぎ上げ、ギヨウは後宮を後にした。
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