第22話 後宮からの手紙

シユとシャオウは、東殿の庭先で、池の金魚を眺めている。


餌をやる素振りをするだけで、口をパクパクして、近寄って来るのが面白い。


そこへ、後宮からの使者が、またやって来た。ギヨウに渡せと、シユに書簡を託す。


書簡は通常、ハクエイ経由でまとめて来る。シユから取り上げ、シャオウが読み上げた。


「今夜、後宮でお待ちしています。ミオンより。今度は、ミオンだって」


内容は同じだが、毎回、名前は違っている。何が起こっているのだろう。


酒楼での目撃情報と、ギヨウの首筋についた歯型が、この事態を引き起こしていた。


シユのは翌日の夜には目立たなくなっていたのに、ギヨウのは痣になって残っている。


ギケイは、王府で一番高い楼から、二人の動きを眺めていた。


シユは、庭の端にある高い木に登ろうとしている。後宮を覗く気のようだ。


「中を見たいようだから、見せてやれ」

ギケイは謎めいた笑みを浮かべ、臣下に告げた。


軍議を終え、ギヨウは自分の居室に戻った。明日には再び、西域へ発つ。


机上に乱雑に置かれた書簡の山を見て、怪訝な顔をする。


見ると、どれも後宮からの誘いだ。だが、その中に、気になる書簡があった。


今夜、後宮でお待ちしています。シユより。


「シユは今、どこにいる?」

シャオウは訊かれ、答えた。


「木の上から後宮を覗いてたら、ギケイ様の手下に連れて行かれました」




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