第18話 おつかい

屋敷にいると、山へ行ったり、街へ出たり、が気楽に出来て良い。


ただ、それを可能にしたのは、ギヨウがテイカを、護衛として残したからだった。


街でゴロツキに絡まれても、テイカがそばに居るだけで、みな逃げて行く。


一介の用心棒から名を馳せたテイカは、街中に顔が知れていた。


「シユ。そこ終わったら、ヘキ爺さんに薬を届けてくれる?それと帰りに、グ姉さんの所で注文してた櫛を受け取って来て。そうそう、酒屋のデンさんに今月分の支払いもして来てね」


リゥユエのお使いを済ませたシユは、街外れの茶屋の暖簾をくぐった。


残りはお駄賃として、テイカと甘味でも。と、リゥユエに言われたからだ。


シユが席に着くと、テイカもシユの目の前に座った。若干の気まずさは否めない。


字の読めないテイカは、客の食べている甘味を指差して、アレがいいとシユに伝える。


シユは、リゥユエから渡された銭袋を覗き込んだ。


酒屋の代金が、言われていたより高額で、残金はそんなにない。


「ひぃぃぃ。蛇だ」

外の席に座っていた客が突如、大声を上げた。


見ると、大きな蛇がこちらへと向かってくる。毒蛇だ。


テイカは、シユを後ろへと追いやると、あっという間に、毒蛇を真っ二つにした。


亡骸を裏の林に捨て、何事も無かったかのように、再び座る。


そこへ、店の中から一部始終を見ていた店主が、やって来た。


「テイカさん、ありがとね。何でも好きな物を注文しとくれ。代金は要らんよ」


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