第17話 西域の地
ギヨウたちは、敵国に攻め入られた西域の州で、戦況を伺っていた。
近くに、深い森と大きな湖があり、その向こうには、黒々とした山脈が連なる。
ギヨウの一族は、ここから興った。最初にこの地を平定し、東へ北へと領土を拡大した。
「敵は退去を始めた模様です。ただ、これを見てください」
偵察に行っていた側近が、一本の旗をギヨウに見せた。
その旗には、山間に住む部族の紋章が刻まれている。
「厄介だな」
ギヨウの顔には、渋い表情が浮かんでいる。
敵国内に間者を忍ばせているが、西域の少数民族と手を結んだという報告はない。
国境沿いの武装兵五万は、守備には長けているが、機動力に欠ける。
特殊な武器を使う民族には、個人の戦闘能力が高い部隊で、応戦したいところだ。
北の残党を追っているシエヤンの部隊か、南軍の将リコク配下の部隊か。
国王軍の精鋭部隊も良いが、半数は中央の貴族の若者で構成されていて扱いづらい。
ハクインみたいな若者たちだ。実力はあるが、権力への反発も強く、私利私欲に走る。
「森の民の力を借りたらどうかね」
顔を上げると、背の低い老人が二人、目の前に立っている。
眉で隠れて見えない目と、床に届くほどの顎髭。二人はそっくりで、見分けがつかない。
森の民はここから少し先、北東の地に、ひっそりと暮らす山岳民族だ。
先代の時代に、不可侵の条約を結んだと聞いたが。
「ところで。その首はどうしたんじゃ?獣にでも噛まれたか?」
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