第16話 急報

翌朝。リゥユエに起こされ、シユは屋敷で目を覚ました。


「首どうしたの?」

首?

昨夜の記憶が蘇り、シユは困った顔をする。


ギヨウに噛まれたのだ。もっとも、最初に噛んだのは、自分だったが。


「ギヨウは日の出前に、国境に向かったよ。何かあったみたい」


シユが慌てて、寝台を降りる。自分も当然行くもの、と思い込んでいるようだ。


「落ち着いて。今回はお留守番だって。数日で戻るって言ってた」


昨晩、皆が寝静まった後、敵国侵攻の急報が入り、ギヨウは王府へと戻った。


深夜にも関わらず、本殿には、現国王ギケイほか、朝廷の重鎮たちが既に集まっていた。


ギヨウの姿を見て、皆一様に安堵し、張り詰めていた場の緊張が和らいだ。


ギケイが内政を収め、ギヨウが国境を守る。両輪がうまく回り、今、国は繁栄している。


「ギヨウが戻るまで、屋敷で過ごそうよ」

リゥユエは、シユが寝ていた寝台にごろんと横になった。


「王府は決まりごとばかりで、息が詰まる。後宮生まれ、後宮育ちの僕でさえもね」


いつも小言ばかり言うリゥユエが、今日は真逆のことを言う。


「首の噛み跡はね、僕には恋人がいます、って言ってるようなものだよ。


おかしいな。シユはハクインに片思いしてると思ってたのにな」


とんでもない方向に話が飛躍し、シユは、大きな目を、さらに大きく見開いた。


「僕は一眠りするよ。お昼になったら起こしてね。昼食は外に食べに行こう」

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