第14話 目の保養

円卓に腰をかけたメイユィは、ハクエイが来るのを待ちわびていた。


空席が二つ。ハクエイが、ギヨウ様を連れて来るということなのだろう。


艶やかな服の男が離席し、残るは、輿で手を貸してくれた男だけになった。


きっと、ギヨウ様の噂の容姿は、誰かがこの側近と間違えて、吹聴したのね。


メイユィが後ろを見ると、連れて来た侍女たちが皆、食い入るように男を見つめている。


あなたたち見過ぎよ。気持ちは分かるけど、あまり見たら不快に思うかも。


男が気づいて、侍女の方へ視線を向けると、皆、ふぉぉぉと、息を吐いた。


そう言えば、輿から降りる時、この側近の手に触れたが、怪我しているようだった。


包帯が、綺麗に巻かれていた。

まるで、大切なものを包むかのように。


ハクエイが入って来た。最後に会ったのは、一年ほど前だ。


肩くらいまでの切り揃えられた髪。色白の肌。一見、冷たい印象だが、中身は違う。


「見つかった。今、屋敷にいる」

遅れるなんて、ハクエイらしくないが、何かあったのだろう。


目の前の男が立ち上がり、大股で去っていく。ふわりと残り香がした。匂いまで良い。


「私が相手ですまない。注文はまだか?」

ハクエイが、腰を下ろした。


メイユィは、周囲を見回す。

「ギヨウ様は来ないの?」


ハクエイの顔に、怪訝な表情が浮かんだ。

「今まで、君の前に居ただろう」


えっ?えぇぇぇーーーっ!!!

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