第12話 めげない心

メイユィの元に、ハクエイからの返信が届いたのは、翌日だった。


無謀な申し出とは認識しているが、後悔だけはしたくない。


震える手で、ハクエイからの書簡を読む。そして、添えられている絵を見た。


メイユィの眉間に、深い皺が寄る。宮中の画家見習いに描かせた、とある。


武神のように気高く美しい、と噂に聞いていたが、期待しすぎたようだ。


目は虚ろで鼻は大きく、顎のラインはぼやけている。


髪の毛は、ほうぼうに散っていて、まるで落武者のようだ。


前国王正妃の唯一の子でありながら、これまで浮いた噂一つないのも頷ける。


この見た目を、自分は愛せるだろうか。

でも。両親が残した財産は、じき底をつく。


「あの絵を見ても、諦めないとはね」

リゥユエは、独り言のように呟いた。


「そんなに酷い絵だったのか?」

「フフ。気になる?」


目の前の男の顔を、リゥユエはじっと見つめた。この顔が、どうしたらあの絵になる?


何だ?

ギヨウが、見返して来る。


目が合い、リゥユエは慌てて、机の上のギヨウの手を取った。


すると、ギヨウが、僅かに顔を歪める。手の平を見ると、無数の豆が出来ていた。


「ここ、膿み始めてる。シユに診てもらったら?」


言いながら、リゥユエは、別のことを考えていた。


シユは、何をやらせても、大抵のことは苦手だ。絵だけではない。


そんなシユに、どうしてゴフは、薬事の知識を授けることができたのだろう。


国一番の医師は、教え方も上手かったのだろうか。


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