第10話 辛口な文官

ハクエイは長年の謎が解明し、ここ数日、すっきりした気分で過ごしていた。


10年前、ギヨウが深夜になっても王府の外を自由に闊歩出来ていた理由。


ギヨウが一向に口を割らないので、シユを昼夜監視させ、ようやく突き止めたのだ。


豊楽殿での宴が終わり、男たちは酔い覚ましに、外の庭で茶を飲んでいる。


「北の姫はどんなかな」

シエヤンが揶揄い混じりに、オウエンに声を掛ける。


北の二州を平定したオウエンに、国王が打診したのは、北の姫との政略結婚だった。


適齢期を過ぎているのは分かっているが、それを言うなら、ギヨウもだ。


いつまで昔の女を引き摺るつもりだ。挙げ句の果て、その女の子供まで育てている。


そんなギヨウは目の前で、呑気にハクエイと象棋に興じている。


「そういや、テイカはどうやって引き込んだんだ?」

シエヤンは、ハクエイに尋ねた。


「武人は皆、脳…」

ハクエイは言いかけて、口をつぐんだ。


オウエン、シエヤン、そしてギヨウまでもが、一斉に自分を凝視したからだ。


二将軍、一上級武官を前に、到底するべき発言ではない。


しかし、ハクエイがギヨウの最後の駒を取るのを見て、三人は何も言い返さなかった。


ハクエイは、唐突に切り出した。

「ギヨウ。明日1時辰ほど、体を借りたい」


「えっ?どういうことよ?」

シエヤンが、ハクエイとギヨウを交互に見る。


「テイカの条件が、ギヨウだった」

ハクエイはそう言い放ち、席を立った。


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