第7話 武術大会

「にぃに、いつまで寝ているつもり?」

シャオウの声で、シユは目を覚ました。窓から差し込む光が眩しい。


シユは飛び起きた。

寝坊だ!


慌てて夜着を脱ぎ、箪笥の一番上にあった服一式を引っ張り出して、袖を通す。


「あっ。それ新しい服」

シャオウが指摘すると、シユは一瞬、今着た服を見た。


質の良さが一目で分かるこの服は着たくないが、今はそれどころではない。


今日は王府内で武術大会があり、その手伝いをするのだ。


武英殿に到着した時には既に、馬上から弓を射る、騎射の競技が始まっていた。


持ち場は裏方にある厩舎で、午前中、馬の世話をする。


行ってみると、馬丁係の青年が、既に忙しそうにしていた。


「納屋にある乾草を取って来るから、少しここを頼む」


去年も手伝ったから、勝手は分かっている。シユは頷いた。


陣幕の内側から、若い女たちの歓声が上がった。思いの外、順番が進んでいるようだ。


遠くに、騎射を終えたハクインが見える。背が高く、その体つきは逞しい。


その時、一人の少女が、幕間から飛び出して来て、隣に並んだ。


ハクインは馬を引きながら、背を丸め、少女の話に聞き入っている。


王家に仕える貴族の血筋と、女好きのする甘い顔で、ハクインはモテる。


だが、シユに気付くと、少女との会話を遮って、足早にシユの方へやって来た。


自分で馬を繋ぐと、シユの腕を掴み、厩舎の奥へと連れ込む。


「金を持って来たか?」

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