第4話 追いかけっこ
「にぃに、何かしたの?」
シャオウは、シユに訊いた。
二人は今、王府の東殿の離れにある、シユの私室にいた。
シャオウはシユと同様、ギヨウの世話係として宮仕えしている。
シャオウは今朝、正室を掃除している時に、あの椅子が出ていることに気づいた。
ギヨウは反省させたいことがある時に、あの椅子に座らせる。
問いには答えず、シユは作業机に移動して、黙々と書物を片付けていく。
ぞんざいに扱われている書物だが、実はどれも希少で高価なものばかりだ。
その時、紙切れが一枚ふわりと、シャオウの足元に落ちた。
拾い上げ、見ると、それは試験用紙だった。ほとんどにバツがついている。
先日、童試と呼ばれる、武官になるための第一歩の試験を、シユは受験した。
実技以外に学科試験もあり、シユはこの学科試験に苦戦していて、前回は不合格だった。
「薬草の試験だったらいいのにねぇ」
シャオウが、意地悪そうに言った。
シユは、シャオウが手にしているものが何かに気づき、取り返そうとする。
「ギヨウ様に見せる」
駆けていくシャオウを、シユがすぐさま追いかける。
とても見せられた内容ではない。しかも、今回は、秘密で受けたのだ。
正室の入り口で、ようやくシユがシャオウを捕らえた。もつれるように、床に倒れ込む。
「こんな所で何してるの?」
二人は、寝転んだまま、上を見た。リゥユエだ。
「ほら、二人とも立って。新しい服を仕立てるから、寸法を測るよ」
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