真夜中の向こう
ささたけ はじめ
第1話
ひょんなことから彼女と徹夜をすることになった。
なんでも、真夜中に虹が見れるというのだ。
初めはそんな馬鹿な話があるわけないと疑った。虹が太陽の光と空気中の水分からなる気象現象であることなど、小学生でも知っていることだ。それがどうして太陽の光のない真夜中に虹が出るのだと、一笑に付したのである。
ところが彼女も譲らない。
特定の条件下でのみ、それは起こるのだという。かつてはその条件を測定するのが難しく、それを目にするのは奇跡の
ならば見せてみろというと、偶然にもそれが今夜だという。「そっちは徹夜になるけど大丈夫?」などと煽ってくるので、負けずに私は「大丈夫に決まっている」と言い放った。
そうして現在、夢魔と闘いながらも、こうしてパソコンの前に座っている。その画面には、七色ではなく白色の虹が輝いて見えた。
パソコンのむこうで、ハワイの彼女は得意げに言ってみせた。
「どう? 見れたでしょう?」
「ああ、本当にあったんだな」
「ところでハワイでは、これを見ると願いが叶うっていうんだよ」
「そうか」
「何かお願いすることないの?」
「そうだな――」
私は小さく呟いた。
「これからも毎年、君とこれを見れるように――かな」
「え? 聞こえないよ」
「なんでもないよ――」
とりあえずは、この願いをきちんと口にする勇気が欲しいところである。
真夜中の向こう ささたけ はじめ @sasatake-hajime
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