あつまれ、従魔たち
夕食を済ませてから俺が再度ログインした時、そこにはサトルたちのパーティーが到着していた。どうやら俺たちがログアウトしたのと入れ違いになっていたようだ。
サトル、シュン、ミッチェル、サーヤのいつものメンバーに、サトルが連れ歩いているシャインバードのシャインとルーンディアーのソニアが傍らにいた。
すると、サトルが俺が戻ってきたことに気付いて駆け寄ってくる。シャインとソニアも一緒だ。
「あ、お久しぶりですユークさん! 今回はワールドイベントに誘っていただいてありがとうございます!」
「こっちこそ参加してくれてありがとな! 今回の敵は悪魔だから、サトルのシャインバードに期待しているぜ」
「はい! ……大丈夫だよな、シャイン!」
「キュゥゥゥン!」
任せろと言わんばかりに高々と鳴くシャイン。すっかり懐いているようだ。それに合わせてソニアも前足を上げてやる気を見せる。
「そういえば俺もそろそろ仲間を呼び出さないとな! よし、『再召喚』――グレイ、コルヌ、ノクターン!」
そして俺は孤児院で留守番していた従魔たちを呼び寄せる。当然ながら皆元気だ。
すると、蔦のようなものが俺の方に伸びてくる。その方向を見ると、カリュアがミュアに抱きしめられながらこちらに近づいてきていた。
「ますたー!」
「カリュア! メリッサの護衛、サンキューな」
「でも、まもれなかった……」
カリュアは残念そうに表情を曇らせてしまう。しかし、アレは仕方のない事だろう。あのアドミスでさえ反応できなかったのだから。
そういえば、アドミスはどこに行ったのだろうか? さっきまで確かそこにいた気がするけど……。
「何はともあれ、これでユークさんの従魔が全員集合ってことですね」
「そうだな。あ、カリュア。メリッサの護衛中に新しく仲間になったコルヌとノクターンだ。仲良くしてくれよな」
カリュアがキョトンとした目でコルヌとノクターンを見ていたので紹介する。そういえば、カリュアとはここで初めて会うことになるんだよな。
「メェェェェン!〔よろしくねぇ!〕」
「ホゥホォォォウ!〔よろしく頼みますぞ!〕」
「――よろしく、ね?」
特に何てこともなく挨拶を済ませていく3体の従魔たち。フム、特に警戒したりなんてことは無さそうだ。みんな仲良しで良きかな良きかな。
そんな従魔大集合の様子を見て、何やらウズウズし出しているのはキャンティとヨハネス。そういえばこの二人、慌てて来たからなのか、従魔を連れてきてなかったんだよな。
一応、2人は獣舎付きのプレイヤーハウスを購入してるみたいで、普段はそこに待機させているみたいだ。いいなぁ、俺もそろそろプレイヤーハウスが欲しいぜ。
「よし、私も呼び出すぞ!」
「待って姉さん! まだ私、選べてないよ!」
「いや、別に急かしてないから、ゆっくり選びなよヨハネス……」
取り敢えず俺がそう言うと、「それならゆっくり選ばせてもらうよ」と恥ずかしそうに笑いながら、従魔の選択を続けていた。
というかこの2人、迷うほどということはいったいどれだけモンスターをテイムしているんだろうか?
確か、連れ歩き可能数を越えてテイムした場合、使役獣ギルドに預けたりする必要があるんだよなぁ。そして預けた場合はギルドの受付で連れ歩きモンスターを入れ替えなきゃいけないんだけど、それがちょっと面倒だったりする。
まぁ、プレイヤーハウスに獣舎がある場合は、その獣舎の収容数までは『再召喚』等で呼び出せる扱いになるのだが、当然ながらその収容数を越えると使役獣ギルドに預ける必要がある。
一応、その獣舎もプレイヤーハウスの土地に余裕があれば増築できるという仕様なので、収容数が足りない時は拡張することができる。
もしかしたら、この2人の場合は既にかなり広げているのかもしれないな。
「……よし、来い! モフたろう、モフじろう、モフのすけ、しかまる、いわたろう、スラさん! 『再召喚』!!」
そう言って、キャンティは自身の従魔を呼び出す。
「キキュー!!」
モフたろうは以前会ったラピッドラビットが進化した個体のようで、前に見たときよりも更に大きくなっている。
進化するとハイラピッドラビットとなるらしい。より筋肉質になってて格闘に強そうな印象だ。
「アオオオオ――キャウン!? ――ア、アウン!」
モフじろうは、前に報告を貰っていたシルバーアッシュウルフの個体だな。
その進化個体であるスターライズウルフのグレイを見て、一瞬ビクッとして変な鳴き声を上げたが、華麗に流して堂々と立っていた。流石はシルバーアッシュウルフというべきか……?
「おぉ……レア個体がいっぱいだ……」
「フフン、そりゃそうさ。なんたって【レア個体マスター】の称号を得てるからな!」
モフのすけ以降はキャンティからテイムした情報を聞いたことも見たこともないモンスターたちだったが、当然ながらこれら全てがレア個体のモンスターであるようだ。
それぞれキャンティが説明もしてくれたので、俺とサトルは興味深く聞くことにした。中々、レア個体なんて見る機会がないからな。
しかし、【レア個体マスター】なんて素敵な称号を獲得しているなんて、流石はキャンティだ。因みに習得条件はレア個体を6体以上テイムすることらしい。俺の場合は……まだまだだな。
「クェェェェン!!」
モフのすけは、第二エリアで出現するようになったデザートイーグルのレア個体であるナイトアイデザートイーグルだ。
通常よりも翼が大きく、力強そうだが、夜でもかなり視界が効くらしい。うちのノクターンと似た性能を持つようだが、サイズが一回り大きいため闇に隠れて敵を討つのは少し難しそうだ。
「ピィィィィ!!」
次に、しかまるはルーンディアーのレア個体であるクリスタルルーンディアーだ。
通常のルーンディアーと異なり、角が結晶のようになっているのが特徴で、身体も角もサトルのソニアよりも一周り大きい。
しかし、鹿の鳴き声って鳥の声みたいな感じなんだな。サトルのソニアが鳴かないから気づかなかったけど。
「――――――」
いわたろうは、ゴーレム系のレア個体であるライトストーンゴーレムが更に進化した個体であるライトロックゴーレムとなる。大きさは普通のロックゴーレムと変わらないのでそこまで大きくはない。
確か、ゴーレム系は中々命令を聞かないという噂であったが、いわたろうも召喚されてからボーッと立っている感じなので、あながち嘘ではないのだろうと思う。
「――――(ジュブジュブ)」
そして最後のスラさんは、スライミーのレア個体であるエンペラースライミーが進化した個体であるエンペラーパラライズスライミーとなる。
麻痺系統の技に特化した進化個体となるようだ。となると、通常のパラライズスライミーとかもスライミーの進化個体だったりするのかもしれないな。
しかし、動く度に何かが溶けてそうな音が聞こえるのが怖いけど、床とか溶かしてないよな……?
「……なんていうか、グレイさんやカリュアさんも凄いと思ってたんですけど、ここまでレア個体が揃うと流石に圧巻ですね」
「だろぉ? 苦労してテイムしたかいがあったものだわ!!」
サトルの凄いものを見たと言わんばかりの感想に鼻高々な様子のキャンティ。しかし実際、レア個体をテイムするなんてかなり大変なことなので、鼻高々になるのも分かる。
流石はβテストで唯一の従魔士になった人だぜ。格が違う。
「……よし、私も決めたぞ! 出てこい! 『再召喚』――カザマル、ランマル、シュテン、トビマル、クモマル、オヤブン!」
そしてそんなキャンティから遅れてヨハネスも自らの従魔を呼び出す。
「ホォォォウ!」
「グルルルルル……!」
カザマルとランマルは前にあった時からそれぞれ進化を果たしており、グレイッシュオウルはノクターンと同じナイトメアオウルに、アッシュウルフはカラーウルフ系ではない進化であるバトルウルフになっていた。
バトルウルフは進化するとコマンドウルフになる。確か、どこぞの金持ちが生け捕りを依頼してたやつだった。
「ウオオオオオ!!」
シュテンは第二エリアの密林エリアで出現するグリーンオーガというモンスターらしく、鬼のような角はコモンゴブリンに似ているが、体格がだいぶ異なり、かなり巨大な身体を持っている。進化してかなり大きくなったグレイよりもデカい。
見ただけでかなり強そうな印象を受ける。
「「…………」」
トビマルとクモマルの2体はどこかで見たことあるなと思ったら、かつて精霊王イベントで突入した古代遺跡で遭遇した事のあるクラストホッパーとスケイルスパイダーだった。
この二種のモンスターだが、どうやら鉱山のダンジョンの11階以降の階で稀に出現するようになるらしく、そこで発見してテイムすることに成功したようだ。結構、入り浸ってるのかな? ダンジョン。
「ヂュヂュゥゥゥ……」
そして最後の一体は草原ラットによく似ているが、それにしてはでっぷりとした体格で、何やら偉そうな雰囲気を出しているが、これはそれらラット系のレア個体であるオヤブンラットとなる。名前はそのまんまだな。
オヤブンラットはラピッドラビット同様、序盤から出現するレア個体ではあるが、その力はレア個体故に普通に強い。鋭い前歯で強力な噛み付きをしてくるので、普通に気をつけないとあっという間にやられてしまうだろうな。
「流石にここまで従魔が集まると、動物園か何かだと思っちゃうねぇ」
「うん……。みんなかわいいね」
「そうか? そうでもないやつも混じってそうだけど……」
サトル以外のパーティーメンバーたちが思い思いの感想を告げる。
しかし、動物園は言い得て妙だな。幾つか現実的にありえないやつはいるものの、その他は確かに動物園にいてもおかしくはないだろう。
あと、見た目的に可愛くなくても『うちの子』は何より可愛いと思っている従魔士は結構多いから、あまりそういうことは聞こえる声で言わないほうがいいと思うぞシュン。
まぁ、キャンティやヨハネスがその手の発言をそこまで気にしないプレイヤーであったのが不幸中の幸いだといえるだろうな。ミラルカとか、従魔士スレの住人とかだと黙っちゃいないと思う。
その後、レンを始めとした他のプレイヤーたちも次々集まってきたが、ほぼ全員従魔大集合な状況に一度は驚いてしまっていた。
そりゃあ、20体近くのモンスターが居れば誰でも驚くだろうな……。
取り敢えず、後は『クロノス』のメンバーを待つだけだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます