『クロノス』の参戦

『やぁ、ユーク。元気してたかい?』

「あぁ、オルカ。イベント前ぶりだな。元気してるよ」


 俺に連絡してきたのはオルカだった。そんなオルカと俺は他愛ない挨拶をすませる。


『さて、本題なんだが……君、ワールドイベント発生させてないかい?』


 オルカもキャンティたち同様、俺が今回のワールドイベントの発生源だと考えていたらしい。なんで君らはそんなに鋭いんだ?


 理由を聞いても『まぁ、君だからね?』と変な返答をされたのだが。何故かキャンティやヨハネスだけじゃなくてレンやリーサも頷いていたけど……。


『そこで僕から、というよりもうちのリーダーから提案があるんだけど……僕らのチームもそのレイドイベントに参加させて貰いたいんだ』


 オルカから提案されたのは、まさかの『クロノス』のレイドイベント参加の希望であった。


 『クロノス』といえば、第一エリアのエリアボスを最速で攻略した、現在あるチームの中でも最強格と呼ばれているチームだ。


 そして、オルカはそのチームメンバーとなる。他の5人のうち、一人はバトルロイヤルの勝利者の一人でシグねぇのライバルを自称しているナギサであり、もう一人は掲示板などで活躍している情報屋データバイヤーのミャウであることは明らかになっているのだが、他の三名に関してはそこまで情報が多いわけではない。


 一応、全員がユニークジョブ持ちであり、一人が魔剣騎士ダークナイトのレイヴン、一人が戦乙女ヴァルキュリアのエインヘリアルというプレイヤーだということは分かっているのだが、残る一人――この『クロノス』のリーダーであるカナタというプレイヤーについては、おそらくほとんどのプレイヤーがその実態について知らないのではないかと思う。当然、俺もよく知らない。


 その際たる理由は、そのリーダーが生産職のプレイヤーだからという事らしい。まぁ、影の立役者として生産職がチームで一番力を持っているなんてことはおかしい話ではない。分かっているのは生産職系のユニークジョブ持ちだということくらいだった。


 それにしても、その人物像が分からなさすぎる。本当に実在するのかも怪しいと思ってしまうレベルだった。


 ……色々語りすぎたが、その『クロノス』がレイドイベントに参加するため、この場に来るのかもしれないという話だった。


 今回の件、このゲーム初となるレイドイベントではないかということで『クロノス』側としては是非とも参加したいという流れになったのだが、肝心の発生源が分からずに居たのだが、オルカが心当たりがあるといって俺に連絡を取ってきて、結果としてそれが大当たりという事らしい。


『勿論、発生させたのは君だから無理にとは言わないけど……もし、人数が足りなさそうだったりすれば、考えてもらえると助かるよ』

「いや、願ってもない話だ。人数もそうだし、戦力としても『クロノス』が手を貸してくれるというのは助かる」

『そうか……! 感謝するよ! うちのリーダーも君のことは興味を持ってたらしいし、ちょうど良かった! それで、時間はいつからだい?』


 その後、俺は他のメンバーとも話し合った結果、夜の21時から実際にレイドイベントに参加することを決定し、オルカにもそう伝えた。


 一応、『クロノス』からは非戦闘員のミャウを含めた6人全員が参加することになった。


『一応、彼女も最低限は戦えるし、情報収集には長けてるかね。それにさっき説明してもらったイベントの詳細から考えると、単純に悪魔と戦うイベントではないのかもしれない。もしかしたら、その先はダンジョンになっているのかも知れないよ?』

「成る程。それなら生産職やサポーターが居たほうがいいかもしれないというわけか」

『まぁ、そうでなくともアイテム系を使った回復役は何人か居たほうがいいと思うよ。レイド系は得てして長期戦になるだろうからね』


 確かに長期戦となるとスキルを使って回復するのも限度がある。そうなるとアイテムを使ったほうがいいのだが、戦闘中でまともに生産ができるのは、生産職系統くらいになる。だから、数人はその手の生産職が居たほうが安定する……かもしれない。


 勿論、そうなると回復役を守って戦う必要もあるのだが、その点は立ち回り次第と言えるだろう。


 そう考えると、メルカにも参加してもらったほうが良さそうではあるな。


『取り敢えず、うちのリーダーに説明して、この手のイベントで事前に準備できることはしておこうと思うよ。だから、到着は時間ギリギリになると思う』

「あぁ。こっちも残りのメンバー集めと準備を進めるよ。……よろしく頼むな」


 こうして、まさかの『クロノス』の参戦が実現した。これでかなりの戦力アップとなっただろう。


 これで集まったプレイヤーは、クラウスが連れてくるであろう5人を含めて34人。残りはあと1パーティー分か……。


 すると、そこてキャンティが話しかけてくる。


「なぁ、お前が許可してくれればなんだが私の知り合いのチームを呼んでも構わないか? 私がワールドイベントに参加するってどこかしらから嗅ぎつけて来たみたいで、しつこく連絡してくるんだよ。一応、私から見ても実力はそれなりにある方だと思うし……」


 それはキャンティから知り合いのチームを参加させたいという要望だった。キャンティはβ時代からの付き合いの広さでかなり多くの知り合いが存在しているのだが、今回はそのβ時代からの知り合いを呼びたいという話だった。


「別に構わないよ。ちょうどあと一パーティー分足りなかったんだ。キャンティが認めるプレイヤーなら問題ないだろ」

「そうか! じゃあ、連絡させてもらうよ」


 こうしてキャンティからパーティーを紹介してもらうことで、ひとまずレイドメンバー自体は集めることができた。


 後は実際に会ってみて、それから準備して、レイドイベント開始だな……!

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