アビリティ選択とゲームスタート

「次は……アビリティ選択か。これがある意味一番の肝なんだよなぁ……さてどうするか」


 そして、ステータス値の調整が終わると次はアビリティの選択画面となる。


 ここではゲーム開始時に習得することができるアビリティの中から3つを選んで習得する。初期は5つアビリティを覚えることができるが、うち2つは完全ランダムとなり、ゲームを実際に始めないとわからないという仕様であった。


 アビリティはどれでも選べるというわけではなく、基本的な技能アビリティが十数種と、プレイヤーごとにランダムに選ばれた効果アビリティや行動アビリティが数十種の中から選ぶこととなる。


 技能アビリティとは、【剣術】や【杖術】などの戦闘技能アビリティ、【調合】や【錬金術】などの生産技能アビリティ、【テイミング】や【商売術】などの特殊技能アビリティの3種類を示しており、行動アビリティは【採取】【採掘】など、効果アビリティは【加速】や【友好化】などが当てはまる。


 因みに行動アビリティは、なければその行動ができないというわけではなく、その行動を行う際の補助や効果アップなどをしてくれるアビリティという扱いとなる。


 ここで肝となるのは、戦闘をメインにしない生産職でも戦闘技能は必ず習得しなくてはならない。習得しないと戦闘が全くできなくなるというわけではないのだが、この技能があるのとないのとでは戦いやすさが雲泥の差となる。


 また生産職の一部には特定の戦闘技能の習得が条件となるジョブも存在するため、その手のジョブの習得を目指すのであればしっかり選択する必要があるだろう。


 あとは、自分がなりたいジョブのジョブアビリティでは習得しないが、それでもそのジョブや自分のプレイングスタイルで役に立ちそうなアビリティを習得していく必要がある。


 なので、ある程度の知識は必要なわけだ。とはいえ必要ならばシステムAI――ここではこの女神様に問いかければおすすめのアビリティを教えてもらえるので、分からなければ聞けばいい。俺は既にある程度目星をつけてはいるので必要はないだろう。


 因みに生産職を目指すなら生産技能は当然ながら必要不可欠だし、俺の目指す従魔士も特殊技能の習得が必要となる。テイミングを覚えていないと従魔士になれないからだ。


 因みに、ここで習得できるアビリティの一部はゲーム開始後にも習得可能とのことで、パーソナルレベルのレベルアップ時に手に入るアビリティポイントを使えば覚えることができる。


 ただし、その習得可能条件は、戦闘技能や生産技能等の技能アビリティ以外は今のところ非公開となっている。技能アビリティはNPCによる技能訓練や技能講習などで習得可能となる。


 また、習得に必要となるポイント数はアビリティの種類によって変わるので注意が必要である。


 時間をかけて選んでもいいが、ここで時間をかけすぎるとせっかくのプレイ時間が短くなるので急いで決めよう。


「ここで俺が選ぶのは……まずは安定の【テイミング】だな。これがないと従魔士にもなれない」


 ここでジョブの習得条件について再度おさらいだ。


 このゲーム内においてジョブを習得するにはそれそれ条件があり、アビリティや行動などがある。


 例えば『重剣士ヘヴィソードマン』になるためには最低でも技能アビリティの【剣術】の習得は必要であり、『剣闘士グラディエーター』になるには【剣術】を習得した上で闘技場でNPCと戦闘するというのが条件の一つとなる。


 勿論、それらのジョブの習得条件は、それだけではないので色々試行錯誤する必要はある。特にクラス3なんかは行動条件も特殊で、ステータス値も関連してくるため面倒だ。


 それらの条件を満たした後は、パーソナルレベルのレベル10になったときに発生する『神々の洗礼』を受けることにより、ジョブを習得することができる。まぁ、できるというよりは、という方が正しいのかもしれないが……。


 勿論、戦士や召喚士のように特定の条件を満たさなくてもなれる汎用ジョブもあるが、そういうジョブはたいてい序盤で行き詰まってしまう。……有沙におすすめした気もするが、気にしないことにする。もしなろうとしてたら止めるか…… 。


 取り敢えず、【テイミング】はここで取っておかなくてはならないということだ。後で取ろうと思うと、アビリティポイントが5ポイントも必要なので、確実にジョブ選択までにテイムするのが間に合わない。


「次に、取り敢えず戦闘用の【杖術】だな」


 杖を得意武器にした為にここは【魔術】を習得したいところではあるが、カフェで蓮司と話していたようにテイムスキルはMPを消費するため、最初に【魔術】を覚えると間違いなくMPが枯渇して肝心のテイミングスキルが使えない。


 もし【魔術】を使うなら、ある程度テイムモンスターが増えてくる頃合いがいいだろう。まぁそれがいつになるのかは知らないが。


 故に杖を打撃武器として扱うことができる戦闘技能アビリティである【杖術】を選択する。


 カフェで言ってたクリティカル戦法が実際に使い物になるのか怪しかったが、結局STRにステータスを多少は割り振ったので使い物にならないということにはならないだろう。


「あとは従魔士に役立つ【魅力の瞳】とか【育成強化】とかがあれば良かったけど、残念ながらどちらもないから……取り敢えず【友好化】でも取っておくか」


 【友好化】は単純にNPCとの友好度が高くなるというアビリティである。これといって絶大な効果はないものの、NPCと仲良くなれば普段は売ってないようなアイテムを売ってもらったり、隠しクエストなどが発生することがあると、『検証班』という攻略サイトで見たため、取り敢えず取っておいても悪いことはないだろう。因みにこれはゲーム開始後には習得できないアビリティとなっている。


 因みに【魅了の瞳】はモンスターの注目度を上げる効果アビリティ、【育成強化】は自分以外のパーティーメンバーの獲得経験値を1.2倍にする効果アビリティである。どちらもモンスターをテイムしたり、育成するのに役立つアビリティで、βテストを従魔士で遊びきった例のプレイヤーが選んでいた。


 なお、それらのアビリティはゲーム開始後に習得可能条件を満たしてから習得する必要があるが、その習得方法はブログに書かれていなかった。残念。


『では最後にあなたの名前を教えて下さい』


 残り2つのランダムアビリティに期待しながら、アビリティ選択を終わらせると、女神が話しかけてくる。


 キャラメイクの最後となるプレイヤーの名前決めである。


 プレイヤーネームに関しては、当初は無難に『ユート』で開始しようとしたものの、本名そのままは流石にマズいかと思って別の名前を考えていた。


 勿論そのままの名前でプレイするプレイヤーも少なくはない。アルターテイルズは、プレイヤーの判別を名前ではなく個別に発行されたプレイヤーコードで行うため、同じ名前を使っても分かりにくい以外は問題ない。カタカナと数字と記号しか使えないが、十分個性は出せる。


 とはいえ、本名そのままは流石になぁ……。


 色々考えた結果、名字の頭の文字を付けて『ユーク』というプレイヤーネームにすることに決めた。


 確か数学者にユークリッドとか居るみたいな話を誰かが話していたような。


 まぁ結果的にあまり捻りのない名前になってしまったことは否めない。


『なるほど、【ユーク】というのですね。ではユークよ。これからあなたは未知なるフロンティアへと旅立つこととなります。あなたはそこで様々な出会いを果たすことでしょう。そこで、あなたはあなただけの物語を作り上げるのです』


 女神がそう語ると、俺――ユークの足元に青く光る魔法陣が浮かび上がる。おそらくゲームの舞台へと向かう転移魔法陣なのだろう。


 そしてその光が一層輝くと、意識は一瞬白く反転する。


 次の瞬間、俺の姿は人が行き交う広場の真ん中、巨大な噴水の前にあった。いかにもフルダイブVRの始まりみたいな感じだった。




 ――――――――――

(1/6)内容が長かったので途中から別ページとして分割しました。これが3ページ目です。また一部内容を改定しました。

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