天使な小悪魔たち

『ピンポンパンポーン!! やぁやぁ皆さん! お待ち遠様でした! 今から運営イベントであるバトルロイヤルを開始するよ! イェイ!』

『まぁ、その前にルール説明をしますけどね。いぇい』


 おそらく全ての参加プレイヤーが転移し終わったのだろうそのタイミングで、俺たちがいるコロシアムの上空に何やら投影されたかのように、映像が浮かび上がる。


 そこには白い天使のような羽を持ちながらも、外見的には小悪魔のような黒い格好をした幼そうな外見の二人の少女の姿が映し出されており、その片方は短めのふわふわツインテール、もう片方はサイドテールといった感じで違いを出している。


 その声は以前からワールドアナウンスとして響いていた声であり、ここでようやくプレイヤーたちの前にその姿を現したことになる。


 アルラウネ以外ではほとんど見られらない幼女の出現に、一部のプレイヤーたちからは大きな歓声が飛び出していた。


『……待ちなよアンナ、アンコ。まずは僕たちの自己紹介が先だろ?』


 すると、そんな二人の横から同じような白い天使のような羽を持つ、小悪魔のような黒いコーデをしたこれまた幼い少年が横から現れ、膝上の短めのショートパンツを履いてる事などがとある層の琴線に触れたのか、また別の場所から黄色い歓声が上がっていた。


『コホン。僕らは君たち来訪者たちに天啓を与える神――いわゆるシステムAIたちの代行者である天使AIだよ。まぁ、システムAIという点では同じ物なんだけど、格が違うって言ったほうがいいのかな? うん、下っ端はつらいよね』


 そう言って、彼らは自分たちの自己紹介――といっても存在そのものの紹介は先に少年が告げたので、名前だけの紹介を始める。


『私はANN-A02「アンナ」だよー! よろしくねー! イェイ!』

『私はANN-C03「アンコ」。よろしくお願いします。いぇい』

『そして僕がANN-B01「アンビー」だよ。僕は特に何も言わないからね? ……えっと、それじゃあ早速だけど、ルールを説明するね』


 そう言うと、彼らの姿が映っている部分が縮小し、新たにルールを記載した表示が現れる。


 それに対し、アンナ達をもっと大きくしろと言う声が響いてくるが、無論システムAIにはそんな声は届かない為、無視して進む。


 ――――――――――――――――――――


『バトルロイヤルのルール』


・最後に勝ち残ったプレイヤーが優勝。

・同士討ちの場合、より多くプレイヤーを倒していたほうが勝者となる。

・HPが無くなるか、システム的に戦闘続行が不可能な状態とみなされるか、フィールドから落下したら敗北となる。

・外周部に一部の消費アイテムが落ちてるのでそれらは拾えば使用可能であり、所持数の制限にも引っかからない。

・外周部では身を隠すことも可能だが、試合開始30分後には地面ごと崩れ落ちるため、気をつけること。

・協力プレイはオッケー。ただし、最終的には一人になるまで戦ってもらいます。


 ――――――――――――――――――――


『……と、一応こんなものかな。今回は基本的に何でもありのバトルロイヤルだから、そこまでしっかりしたルールらしいものはないんだけど、取り敢えずこういう流れになるよって事だけは覚えていてほしいかな』

『特に外周部の方は、気付いたら30分経っている場合もあるので、崩壊に巻き込まれないよう気をつけましょう』

『まぁ、ずっと真ん中に居てもいいけど、それはそれでたぶん狙われるから気をつけてねー!』


 それぞれがルールを見た上でアドバイスなどを語るが、アンビーが言う通りこんなものはルールとは確かに言えないだろう。ほぼほぼ何でもありな状態になっている。


 しかし、外周部に消費アイテムがあるのは結構重要そうな気がする。回復系の消費アイテムはここに持ってくることができる数が限られているため、消耗しすぎると大変なのだが、もしここで確保しておけば後々だいぶ楽になるのではないだろうか。


 とはいえ、攻撃を受けなければ問題ないのでわざわざ向かう必要がないプレイヤーも少なくないだろう。その場合は、外周部に向かったプレイヤーを狙って攻撃していけばいい。


『因みに外周部のアイテムにはステータス強化アイテムやダメージ無効アイテムもあるから、回復アイテムに興味なくても探しに行くことをオススメするよ!』


 そうアンナが言うものだから、辺りの殺気が更に高まってしまう。ステータス強化アイテムがどのようなものなのかは分からないものの、ダメージ無効アイテムは是非とも欲しい。


 外周部は障害物もあって身も隠しやすいが、30分で崩れてしまうというのが気になるところではある。アンコの言う通り、うっかり崩壊に巻き込まれてリタイアは色々恥ずかしい気もする。


 とはいえ、果たして30分も経過するのかという疑問はあるが……シグねぇやクラウスらのフィールドならともかく、普通の場合は結構長期戦になってもおかしくは無さそうだ。


 それに協力ありという項目は気になったが、これは特定のプレイヤーを狙う際に同時に攻撃しても問題ないということになる。


 そういった場合に真っ先に狙われるとすれば、間違いなく弱そうなやつになる。


 ……そう、俺みたいな格好をしているやつだな。


『さて、そろそろ時間になるけどみんな準備はいいかなぁ〜?』


 アンナがそんなことを言うものだから、周囲から歓喜の声が上がる。皆、意気揚々という感じで武器を高々と掲げている。


 うーん、いいねぇ……こういう空気。


『それじゃあ、カウントダウン始めるよぉ〜! 3……2……1……』

『『『ゼロ! イベントスタートだよ!!』』』


 3人の天使な小悪魔たちが一斉に試合開始の掛け声を言い放つと、取り囲んでいた見えない壁が取り払われ、あたり一面にプレイヤーたちが散っていく。


 まずは全員、外周部のアイテムを回収しに向かうようだ。狙うはステータス強化アイテムかダメージ無効アイテムだろう。


 かくいう俺もそれらのアイテム狙いで外周部へと向かうことにした。グレイに騎乗すれば速いが、そうなるとミュアと別行動になるため、取り敢えず並び立って向かうことにした。


 すると、案の定俺の姿を見てコソコソ話をしていたプレイヤーたちが俺たちの前に立ちはだかるのであった。


 ――――――――――

(10/22)アドミスの妹のギルド受付嬢の名前を「エミリア」に変更しました。

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