組分け発表

 その後受付が終了し、総勢で500人近くのプレイヤーがこのバトルロイヤルに参加したことから全部で5つのバトルフィールドで行われることとなり、そのグループが抽選されることとなった。


 その結果、俺は第5フィールドにあてがわれることとなった。


 ここにいる俺の知り合いでは、レンが第1フィールド、シグねぇとユーリカが第2フィールド、リックとクラウスが第3フィールド、オークラさんとナナミが第4フィールドとなった。


 他に知ってるプレイヤーだと、従魔士サトルのチームメンバーも参加しているようで、ジュンが第1フィールド、サーヤが第3フィールドであった。


 ついでに言うと、ナギサは第4フィールドとなっており、遠くでシグねぇと一緒じゃないことを憤慨する声が聞こえてきたと思えば、何かしらを叩くような小気味いい音が響いた。


 ……取り敢えず、手強そうな彼らと同じ組に当たらなくてよかった、とは思ったものの、それとは別の問題が発生していた。


 一応、参加メンバーの一覧表にβテスターかそうでないかが力量を示すために追記されているのだが、第1から第4までのフィールドではきっちり100人でその大半がファーストロットプレイヤーとなっており、βテスターはサトルのチームメンバー以外の俺の知り合いのメンバーと若干数くらいしか居ない様子だったのに対し、何故か第5フィールドは総人数が100人にやや満たない上に他の組と違ってβテスターが30人近くとなっている。


 つまりβテスターの参加者の殆どが、俺と同じフィールドに集まっていて、明らかにフィールド毎のパワーバランスがおかしいことになっている。おい、抽選の優先はどうなってんだ。


「……何ていうか、お前って運がいいのか悪いのかホントよく分からねぇよな」

「マジでな。どうすっかなぁ……これ」


 βテスター相手とはいえ、ゼファーやミュアたちと一緒ならそう簡単には負けない自信はあるものの、とはいえファーストロットプレイヤーと比べると戦いづらい相手であることは確かである。


「あら、そんなの決まってるじゃない。全部叩きのめせばいいのよ!」

「ユーリカ、そんなんだから脳筋って言われるんだよ?」


 そんな俺の悩みも知らず、ホントに脳筋的発想を口にするユーリカと、それにツッコミを入れるナナミ。


 オークラさんは既にナギサやナナミのような魔術士系のプレイヤーをどう対処するか考えているようで、リックと互いに話し合っている。


「ま! 私はシグと遂に対決するときが来たからね! 負ける気はさらさらないわ!」

「あら。私も当然負けるつもりはないわよ?」


 ユーリカはシグに対して宣戦布告を言ってのけ、シグねぇも当然ながら負けないと言ってのける。


 ナギサと違って、売り言葉に買い言葉といった風に言い返さないので、清々しい青春ものみたいな感じになっている。ナギサもこのくらいの態度だったら色々言われないんだろうけどなぁ……。


「取り敢えず、ユークの場合はゼファーやミュア、グレイと連携して戦えるっていうのが他のプレイヤーにはない強みだからな。それに賭けるしかないたろ。幸い、β時代に有名だったやつはいなさそうだしな」

「そうだな。俺の他にも従魔士は居るみたいだけど、流石にレア個体持ちとかは参加してなさそうだ」

「そりゃ、例のβテストの時の従魔士かお前くらいだろ、レア個体をテイムしてるプレイヤーってのは」


 まぁ、それはそうだろうな。あんな強力な個体、一体でもテイムするのは大変なんだから……と、どの口が言うんだという返答をしてしまい、レンからはジト目で見られてしまった。


 ミュアに至っては、もはやもう一人戦闘キャラが居るようなものだから、アドバンテージはヤバい。


 因みにキャンティさんも既に複数体のレア個体をテイムしているらしく、昨日は俺がカリュアをテイムするときに使った『レア個体のモンスターが出てきやすくなるかもしれないお香』を使用して、シルバーアッシュウルフをテイムしたとフレンドチャットで教えてくれていた。


 その個体はグレイよりも少し小さめで、傷もあまりなさそうな個体ではあった。目も潰れてなさそうだったし。


 その直後に、俺が進化したグレイのスクショを送ったら『また負けた!』と返事が来たのだが、別に俺は勝負しているつもりは無いよ、キャンティさん?


「そういえば、そんなミュアちゃんたちはどうしたのかしら? 従魔がみんな、ユーくんと一緒に居ないなんて珍しいわね」

「ミュアたちはコロシアムが気になるからって見に行ってたんだけど、確かにまだ帰ってこないな……何処にいるんだろ?」


 流石に小一時間近く不在だと不安になるので、『モンスターコール』で呼び寄せる。


 すると、コロシアムの奥の方からミュアたちが歩いてきたのだが、そこには何故かメリッサとアドミスが一緒にいた。


 メリッサの服装は流石にボロのローブに貴族っぽい服ではなく、普通の町娘風の風貌になっていた。アドミスは相変わらずだが。


 二人共ドリンクっぽいものを飲んでいるが、普通にそれは紙コップなのでは?


 ……この世界の技術設定って結構曖昧なんだよなぁ。さっきは休憩所みたいなところでペットボトルの水売ってたし。


 かと思えば、コロシアムの一階にある『戦士の酒場』ではよくファンタジー物で目にする木の樽みたいなジョッキが主流みたいだし。


 まぁ、気にするだけ無駄だろう。所詮、これはゲームなんだし。それよりメリッサとアドミスだ。


「あれ? メリッサにアドミス!? なんで二人がここに?」

「ご機嫌よう、ユークさん。一応、裁判までは猶予があるのでアドミスさんと一緒に試合の観戦をしにきたんです」

「流石に来訪者がこれだけいる場所で、この子を狙う馬鹿も居ないだろうからな。それに、たまには娯楽も取り入れないと心が壊れてしまうからな」


 ……まぁ、あんたが側にいればどこに居ても狙われないとは思うが。


 どうやら二人は、リフレッシュの為に俺たちの試合を見に来たらしい。まぁ気分転換は大事だからな。


 で、その際にコロシアムの様子を見に来ていたミュアたちと再会し、今の今まで話し込んでいたようだ。成程、だから今の今まで帰ってこなかったんだなお前たち。


 因みにこのバトルロイヤル、NPCはプレイヤーとは別の場所で観戦することとなるため、俺たちの中では観戦予定となるリーサとは一緒に見れないと知り、メリッサは残念がっていた。


「取り敢えず、ユークさんやレンさんの勝利を願って応援しますので、頑張ってくださいね!」

「おう、任せとけ! 俺の双剣捌きを見せてやるよ」

「サンキューな、メリッサ。取り敢えず、早々に負けないよう頑張るぜ」


 激励を送るメリッサに感謝していると、その横で立っていたアドミスが厳しい視線を俺に浴びせてくる。


「そんな意気込みでは勝てるものも勝てないぞ。やるなら絶対勝利だ。勝つことだけを求めて戦え」

「うっ……分かったよ! 絶対に勝ち残る! ゼファーにミュア、グレイが居るからな。負ける気はしないよ」


 そう俺が言うと、「その意気だ」とニヤリと笑みを浮かべながら呟くアドミス。そして二人はNPC用の観覧席へと向かって歩いていくのだった。


 そんな二人を見送っていた俺にクラウスが近付いてくる。


「いやはや、あの肉体……かなり鍛え抜かれたものとお見受けしましたが、どなたですか?」

「あれは……うん、俺たちではまだまだ届かない果ての極みみたいな存在だよ……」


 流石にレベル100だとか、そういう情報をホイホイ流すのもあれだし、説明するのも面倒なので適当に対応する事にする。機会があれば、説明することにしよう。


 そんな俺の適当な返しに、クラウスは「成程……」と何かを理解したかのような雰囲気で頷いていた。これでどう理解したっていうんだ……?

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