脅威の新装備

 その後、俺はシグねぇと共に放置してしまっていたクラウスを探すために混み合っている通路を再び戻ると、そこではクラウスと共に話をしているオークラたちフライ・ハイのメンバーとレンの姿があった。


「おっす、ユーク。そっちは早かったみたいだな」

「よう、レン。昨日は早めに寝たからな。だいぶ早起きしちゃったよ。おかげで8時までに皿洗いから洗濯物まで一通り済ませてきたぜ」

「ハハハ、それを8時まで済ませるとか男子高校生の所業じゃねぇんだよな」


 そんなことを言われても、一人暮らしなんだからそういうことは自分でやらないといけないわけで。


 とはいえ、そんなことを言ったらクラウスを始めとして知り合いたちの多くは目を見開いている。


 ……え? みんなはやらないの?


「それはともかく、だ。……ユーク、お前サザンカにとんでもないものを作らせたな? 俺受け取ったとき目を見開いたぞ。なんだあの効果」

「あぁ、あのグローブだろ? 俺もびっくりしたよ。アシュラゴーレムのゴーレム核でまさかあんな代物が出来るなんて思わなかったな」


 そう言って俺とおそろいのグローブである『星森のコアグローブ』を見せつけるレン。といっても俺の方は、初心者装備の武装装飾を身に纏ってるので見えないのだが。


 サザンカさんが、俺の持っていたアシュラゴーレムのゴーレム核を使い、更に風属性の遺跡の宝石を利用することで制作した、手甲部分が金属製でその中心に核となるオレンジ色の石が嵌められたこの『星森のコアグローブ』だが、脅威の☆8防具となっている。因みにレンの方はランクが一つ下がって☆7となっている。


 その効果は、俺の場合はHPが150減少する代わりに、全てのパラメーターステータスが1.3倍になるというものである。そう、全てのパラメーターステータスだ。


 パラメーターステータスはSTR・VIT・INT・MIN・AGI・DEXの6つのステータス項目のことなので、HPは大きく下がることになるがその分、かなりのステータス上昇を見込めるということになる。


 レンの方も同じような効果だが、ランクが下がってはいるため効果は1.2倍となっている。HPの減少量は変わらない。


 どう考えても、かなりのぶっ壊れ性能となっているのだが、その分HPが大きく減るため、戦い方を工夫する必要がある。


 まぁ、耐久系や俊敏系のステータスも上がるからスタイル次第ではあってないようなデメリットになるだろうが。


 因みにサザンカさんはこのレシピを、第二エリアで得られた素材を元に色々試行錯誤していた中、本当に偶然レシピの原型らしいとの発見したらしく、その後、例のアシュラゴーレムのゴーレム核を利用して作り上げた完成品を見た時には、かなり震えてしまったと報告してくれていた。


 そりゃそうだろう。下手すりゃ、コレの存在で現状の装備の概念が大きく覆ってしまうからな。


 しかし、鍛治にしろ何にしろ、生産関係ではかなり独自性オリジナリティの要素が強く、素材一つにしてもランクや微妙な種類の変化で、全く異なる物が出来上がる事があるらしい。そこに生産職プレイヤーの作業のやり方やリアル技能の腕前、そしてその生産環境や条件なども加わることで、同じスタートからでも全くの別物が出来上がってしまうのだから、全く不思議なものである。


 ある意味では生産レシピというものは、最低限のものを確立させるためのもので、そこから発展させていくのが生産職プレイヤーの、腕の見せ所ということなのだろう。このゲームの生産職プレイヤーが意外と多い理由は、その点がかなり大きそうな気がする。


 おそらくだが、このレシピにサイモンさんはまだ辿り着けていないだろう。理由としてはアシュラゴーレムの高ランクゴーレム核が必要なこと(最低でも☆6以上は必要なようだ)と、第二エリアで得られる素材を多く利用していることにある。他にはほぼカンストに近い【中級鍛冶】のアビリティレベルが必要らしいが、その点はサイモンさんなら余裕でクリアしているだろう。


 まだ、サイモンさんを始めとしたフライ・ハイの面々は第一エリアにいるらしいので、その点は先に進んだサザンカさんの一歩リードといったところだろうか。


 ……とはいえ、アシュラゴーレムに関しては向こうのダンジョンのものだし、第二エリアの素材も彼らが第二エリアに出ればすぐに集められるだろうし、案外すぐに追いつかれ追い越されるかもしれないが、今は少なくともサザンカさんの天下……かもしれない。


 マジサザンカさん、マジパネーっす。


 因みにこの装備、性能に比例して装備としての耐久値がかなり低く設定されているので、こまめに修復しないとすぐに破壊状態になって使えなくなってしまうらしい。


 というか、もしかしたら下手すると今回のイベントの戦闘回数によっては、早々に限界を迎えるかもしれないが、まぁその時はその時だろう。


 しかし、おそらくだが、サザンカさんはもはや現在のプレイヤーの中ではサイモンさんの次に強力な装備を作れる生産職プレイヤーなのではないだろうか。


 まぁ、まだシグねぇたちのチームにいるらしい、かなり凄腕の服飾系ジョブプレイヤーには会っていないし、そもそも技能が違うので完全にランキングは決められないのだが。


 やはりあのとき、サザンカさんをチームに誘っておいて本当によかったな……。


 他にもサザンカさんに強化してもらったり、新たに作ってもらった装備などが多数あるのだが、俺の場合ジョブがステータスに関与しないため、それらの装備によって、ステータスは大きく変わることとなる。逆に言うと装備で強化しないと俺のステータスは全然上がらないということになる。


 では、現在のステータスがどのようになっているか紹介しよう。


 ――――――――――――――――


 名前:ユーク

 Pパーソナルレベル: 32

 種族:人間族

 得意武器:杖

 ジョブ:従魔士テイマー レベル25

 チーム:オーバークラウン(6/6)


 HP:170 / 170(-170)〈+80〉

 MP:385 / 385(+70)〈+40〉

 STR:202(+120)【×1.3 → 262】

 VIT:207(+140)【×1.3 → 269】

 INT:402(+280)〈+40〉【×1.3 → 522】

 MIN:226(+160)【×1.3 → 293】

 AGI:217(+120)〈+30〉【×1.3 → 282】

 DEX:142(+10)〈+50〉【×1.3 → 184】


 SP:0


・アビリティ(4ポイント)

初期:【杖術 レベル10 MAX】【テイミング レベル9】【友好化】【緑の息吹】【黒龍の印】

追加:【観察眼】【起死回生】【不屈】【精霊術】【強襲】【致命の一撃】【中級杖術 レベル7】【魔杖術 レベル4】

装備:【MPセーブ(精霊術)】【三位一体】【PSパラメーターステータス1.3倍】【早移動】【幸運】

・スキル

『テイミング』『精霊術』・致命の一撃(『アサルトアタック』)・魔杖術(『エネボール』『テレキネシス』)・『姿隠し』

・アーツ

杖術(『強力杖殴り+』『大薙ぎ』『あか突き』『瞑想(杖)』『蓮華打』『金剛爆打・明鏡』)・中級杖術(『飛突』)


〈ジョブ〉

・特性

 テイムモンスターの全パラメーターステータスが【1.5】倍。この数値は【補正強化】のレベルによって変化する。

 テイムモンスターを【6】体まで連れ歩くことができる。この数値は【連れ歩き数+】のレベルによって変化する。

・ジョブアビリティ

【テイム補助 レベル5】【従魔成長】【テレパス】【補正強化 レベル3】【連れ歩き数+ レベル3 MAX】【従魔との絆】【騎乗】

・ジョブスキル

『モンスターコール』『モンスターリンク』『スキルスワップ』『緊急召集』『モンスターエンハンス(STR・VIT・INT・MIN・AGI・DEX)』『一時離脱』『再召集』『モンスターライフアップ』『モンスターマナアップ』

・ジョブアーツ

『号令』『鼓舞』『従魔激励』


〈装備〉

・武器

 メイン:精霊王の宝緑剣(成長度3:Pパーソナルレベル30到達 INT+70 DEX+30 MP+20 【MPセーブ(精霊術)】)

 サブ:阿修羅巨像の魔杖+(INT+50 STR+40 【三位一体】)

・防具

 頭:星森の耳飾り(STR+40 MIN+40 DEX-30)

 胴体:宵白狼の胴鎧改(INT+50 VIT+40 MIN+20 HP-30)

 腕:アッシュバングル改(INT+30 AGI+40 )

 手:星森のコアグローブ(HP-150 【PSパラメーターステータス1.3倍】)

 腰:クロムライトベルト改(HP+40 VIT+20 MIN+20 DEX−20)

 脚:宵白狼の脚鎧改(INT+50 VIT+40 MIN+20 HP-30)

 靴:風切鳥のブーツ++(AGI+60 【早移動】)

 外套:姿隠しの外套++(MIN+60 『姿隠し』)

・アクセサリー

 幸運の眼鏡(MP+50 【幸運】)

 星森のペンダント(AGI+40 DEX+10)

 星森の指輪(DEX+40 INT+30)

 鉄筋の髪飾り(STR+40 VIT+40 DEX−20)

 武装装飾・初心者装備


〈称号〉

【ジャイアントブレイカー】【精霊の守護者】【精霊王の祝福】【ゴーレムキラー】【屠る者】【阿修羅の拳を砕きし者】【鉱山ダンジョン10階層踏破】【Sランクに認められた者】【ウルフキラー】【始まりの越境者】【名が売れ始めた来訪者】


〈従魔・使役〉

 ゼファー【星嵐の精霊】レベル31

 ミュア【ハーフエルフ】レベル32

 グレイ【スターライズウルフ(レア)】レベル31

 カリュア【ドライアド(レア)】レベル28

 ノクターン【ミッドナイトオウル】レベル24

 コルヌ【エスケープゴート】レベル24


 ――――――――――――――――――


 実際のイベント時には、レベル30以降にレベルアップで上がったステータス値は無効化されるが、俺の場合はホントに誤差にしかならないので問題ないだろう。


 パラメーターステータスの方は、INTが高めなこと以外は割とバランスがいい形となっているように思える。DEXが低いが、これはサザンカさんにDEXを減らして他のステータスを上げるようお願いしていたのだから仕方ない話となる。


 本来ならカリュアの【技量貸与】があることが前提となるが、今はカリュアが居ないので減ったままとなる。まぁ、俺の戦闘スタイル的にDEXの数値は精霊術のクリティカルくらいにしか関与しないので、特に問題はないだろう。問題があるとすれば、それはモンスターをテイムするときくらいだからな。


 その過程で装備を変更したことや前述のグローブによって、HPやMPが大きく減ることとなったのはご愛嬌というやつだ。まぁ、まだナサの方がHPは低いものの、あっちは基本的に生産職だからな。


 新たに頭防具として装備している『星森の耳飾り』は一応物理系の攻撃と防御のステータスをメインに上げられるよう構成されている。普段は【手加減】持ちの『新緑の耳飾り』を使用することになるため、このイベント後は使われなくなりそうな気配はする。


 アシュラゴーレムのドロップ武器『阿修羅巨像の魔杖』やイアンの店で購入した『宵白狼シリーズ』はようやく一段回目の強化となるが、かなりの強化となっている。


 阿修羅巨像の魔杖+で新たに発現したアビリティ【三位一体】は3種類の術式スキルを同時に展開することができるというもので、使い所は中々無いかもしれないが、使い方によってはかなり面白いことができそうな気はする。


 初期から付けていた装備は既に二段階目の強化となっているが、それでようやくステータス補正は強力なプレイヤーメイド防具の初期値と同等になるのだからやるせない。まぁ、特殊なアビリティやスキルがあるのだから仕方のないことなのだが。


 アクセサリーには同じく新たにサザンカさんに作ってもらった『星森の指輪』と『鉄筋の髪飾り』を装備している。どちらも例の遺跡の宝石を使っているためレア度が高く、効果も高い。ワンポイントで緑色の宝石が光ってるのがとてもキレイだ。


 しかし、ステータスを見るとコアグローブを着けなくてもDEX以外は普通に200超えてるんだよなぁ……正直要らないのではないか疑惑があるけれど、まぁそれはそれだ。どうせこのイベント後は管理が面倒で、いざというときにしか使わなくなるだろうし。


 かなりお金も無くなったが、まぁそれでもかなり安いほうだ。材料もこっちが出したものも多いし、おそらくサイモンさん辺りに頼んだらこれの倍以上はかかっていた筈だ。


 因みに地味に従魔が増えているのだが、実は昨日のレベリングの際に出会ったモンスターの中で、珍しそうな奴らや強そうな奴に対しては、仲間にすべくテイミングを試していたのだ。……経験値効率? そんなことよりテイムでしょ!


 まぁ、流石にその時は今の装備よりもDEXが上がるものを使っているんだが。


 結果としてフォレストオウルの二段階目の進化個体であるミッドナイトオウルと、山羊型モンスターであるエスケープゴートの2体をテイムすることに成功した。【テイミング】のアビリティレベルもあと少しで上限に達しそうで、その次のアビリティがあるのかが気になるところだが、今は関係ないな。


 一応、連れ歩きできる数的に彼らを連れていてもおかしくはないのだが、イベント参加の為に今回は使役獣ギルドでお留守番をしてもらっている。


「レンは他に装備は新調した?」

「いや、アクセサリーとお前からのお裾分けのこのグローブ以外は、基本的に現行の装備を順当に強化してもらってる感じだな。サイモンよりも強化の増減が激しいけど、俺にはちょうどいい感じだな」


 レンもサザンカさんに装備を頼んではいたものの、俺と違ってダンジョンのフロアボスの素材や例の遺跡の宝石などをある程度持っているわけではないので、作れるものは限られていたようだ。


 レンが持つグローブに関しては、サザンカさんが試しに作ってみて偶然出来た際のものになる。なので、少し性能が低い。


 そこから諸々調整して作り上げたのが俺のグローブなのだが、もしゴーレム核がまだあれば更に良いものになっていたかもしれないと聞かされているので、サザンカさんに秘められた底知れぬ才能を感じ取ることとなった。


 流石に同じような装備を2個持っててもアレなので、ここは俺からの餞別という形で、レンにフレンドチャットのギフト機能を使ってお裾分けした形となる。まぁ、昨夜送ったのでレンは今朝気付いたらしいが。……やはり、イベント後に送ればよかったかな? ミスったかも。


 取り敢えず、これでかなり自信があるのが分かっただろう。負ける気はしないぞ。……レンとかシグねぇとかクラウスとかと同じ組にならない限りはな。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る