Sランク冒険者の圧倒的な実力
「……よく来たな、冒険者ユークよ! 俺の名はアドミス。Sランク冒険者だ。今回、君のランク昇格試験を引き受けることとなった。宜しく頼む!」
筋肉質の男はそう告げると高らかに笑い出す。
Sランク冒険者と言わなかったか、コイツ……。
俺が、確か受けようとしているランクはEランクだよな? なんで遥か上のランクのNPCが試験官なんだよ!?
「ん? なんでSランクの俺が、Eランクの試験官をしてるんだって顔をしているな? まぁ、その答えは『人がいない』からだ」
多分ほんとまんまその顔をしていたであろう俺に向かって、事態の説明を始めるアドミス。
実は本来の場合でもランク昇格試験はAランク冒険者が対応することとなるらしいのだが、このところ新人冒険者という名の
本来なら第二の街こと『バトルス』の冒険者ギルドで対策するらしいが、開拓の村と離れているのではじまりの街こと『ハッシュ』の冒険者ギルドで対策することとなったらしい。
そのしわ寄せとして、本来なら駐在する必要のないSランク冒険者であるアドミスが試験担当として居ることとなり、そして俺が試験を受けに来たという話となる。
因みにAランク冒険者とSランク冒険者の戦力差であるが、アドミスの弁では『月と太陽くらいの差』らしい。よく分からないが、自分を太陽だと言っているであろうことは理解できた。なんかギラついているし。
「さて、ランク昇格試験は一対一で、試験官であるこの私にその実力を見せてくれれば問題ない……が、そこのシルバーアッシュウルフを見るからに君は
実力を見定めるNPCだからというのもあるのだろうが、まさかミュアやゼファーの正体をこうもあっさり見破られるとは思わなかった。
今まで関係するNPC以外にはミュアはエルフ族としか思われなかったし、ゼファーは姿を隠していたらNPCにも認知されなかったというのに。流石はSランクといったところなのだろうか。
俺はその通りだと答える。
「そうか! なら、始めようか! あくまで君の実力を見定めるのが目的なのだが、私は手加減が苦手でな。……君は、君たちは勝てなくても、それ以前に手が出なくとも、絶望しなくていい。それだけの力を――私は持っているからな」
ニヤリと笑って虚空から大剣を取り出すアドミス。戦闘開始のようだが、名前は見えども相手のレベルが全く見えない。まるでこの前の隠しクエストのようである。
アドミスのその笑みに、俺は得も言われぬ恐怖を感じて咄嗟に宝風剣を構える。ミュアも弓を構え、ゼファーとグレイも臨戦態勢となる。
……が、結果としてそれから数十秒後には俺たち全員が戦闘不能状態となって横たわっていた。
さっきの確認の時点で試験としてシステムに認識されたのか、戦闘不能となっても死に戻りすることはない。……ないのだが、それにしても何なんだこれは……?
その剣を抜いた一瞬の間に近くまで詰め寄られたと思ったら、あっという間にゼファーとグレイが吹き飛ばされて倒された。どちらもAGIはそれなりに高いというのに、避けるどころか反応することさえ出来なかった。おまけにグレイは大剣の一撃で倒されている。それなりのVIT値があるにも関わらずだ。
ミュアはその際、咄嗟に『アローレイン』のアーツを発動し、自分たちもろともアドミスを攻撃しようとしたのだが、アーツが発動し弓から放たれた分岐する前のアローレインの矢をアドミスが振るった大剣の圧によって叩き折られた。射出から分岐はコンマ数秒の世界なのだが、それを見もせずに剣を振るっている。
流石にそういう形で発動を阻害されたことは、今までにあるわけが無かったので驚きを隠せなかったミュアは、次の瞬間にはアドミスによって吹き飛ばされて戦闘不能になる。
俺は速度の出る精霊術を発動しようとしたが、そんな隙は与えないとばかりに攻撃を繰り返していくアドミス。俺は自慢の視力で、なんとかギリギリだが避けることはできていた。最初に避けたときは驚いたように目を見開いていたアドミスだったが、やがてニヤリと笑みを浮かべると、だんだんとスピードアップしていく。
やがて俺は訓練場の壁に辿り着いてしまい、もう逃げることができず、結果としてその直後に放たれた一撃をモロに食らったことで戦闘不能となった。
結果として全員がほぼ一撃で倒されてしまったということになる。いや、何なんだこの規格外の化け物チートキャラは! よくよく見てもレベルは非表示だし、もう何がなんだか分からないぞ……。
〈ギルドイベント『特別な昇格試験』をクリアしました。称号【Sランクに認められた者】を獲得しました。特別報酬を獲得しました〉
倒れたままの俺にいつもの無機質なアナウンスが流れる。いや、こんなので認められたって……マジかよ。
――――――――――
(8/31)『一息ついて』において、『阿修羅の面』の装備スキル『アシュラモード』の効果説明を一部変更しました。ご確認ください。
また、『ナサとリリーのステータス』においてナサのステータスが間違っていたので修正しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます