ナサの方向性
「しかし、そのメイド服、結構VITとかの数値が高いんだな」
「へ? あ、いや、これはですね! 好みの外見に変更できる『武装装飾』ってアクセサリーを使ってるんですよ!」
「へぇ、外見変更アクセサリーか。面白いなそれ」
初めて聞いたが、成程そういうアクセサリーもあるのか。
武装装飾は、ステータスに与える効果はないものの、防具の外見を変えることができるらしい。ただ、ステータス効果がない上に基本は防具の上と下とで二箇所のアクセサリー枠を消費するので、ステータス重視のプレイヤーからはあまり使われないらしい。しかし、見た目を気にするプレイヤーからはそれなりに人気があるらしい。
聞けば、本来の装備は
因みに
同様に防具を作ることができる鍛冶士系ジョブとの比較だが、基本的には使用する生産技能と素材の違いにある。鍛冶士系は【鍛冶】を中心に鉱石・金属素材を扱い、服飾士系は【裁縫】を中心に布・革素材を扱い、生産を行う。
これは鍛冶士の場合は革鎧は作れないものの金属鎧は作れ、逆に服飾士は金属鎧は作れないものの革鎧は作れるという感じだ。ただし、素材の一部にその技能で使える素材がある場合は、スキルなどを併用することで無理矢理作れるらしいが、本職には当然ながら性能で劣るらしい。
装備の強化自体はジョブスキルで行い、どちらの系統のジョブでもクラス2以降であれば『装備強化』のスキルがジョブスキルに存在するので、基本的にはどちらの系統でも大丈夫だが、生産時と同様にジョブと素材とが対応しているかどうかで強化の上がり幅が異なる。
ただし、ジョブがその装備の材質に対応していなくても、その材質を扱える生産技能をプレイヤーが持っていると、スキルによる強化の上がり幅や成功率の判定が本来その材質を扱えるジョブと同等になるらしく、サイモンさんはその仕様を活用するために【裁縫】を取得しているらしい。流石だ。
武器に関しては大半は鍛冶士の役割になるが、特殊カテゴリーの人形や基本武器種の一つである鞭などは逆に服飾士系のジョブの一部で製作可能となる。なので、一応人形製作士も服飾士系統のジョブの1つにあたることとなるが、これは余談だ。
しかし、銀装備に特注の武装装飾と、色々金がかかってそうだが、まさかリリーもβテスターだったりするのだろうか? と思ったが、それならわざわざこういうレベリングに参加するわけがないので違うだろう。単純に自力や人の縁、その他金なり何なりで手に入れたのだろう。それに銀鉱石自体は鉱山ダンジョンで稀に出現するシルバーゴーレムからも手に入るしな。
「成程な。俺もその武装装飾に興味あるから後でそのプレイヤーのことを教えてくれるか?」
「はい! 勿論です! ……あっ、でももうそのプレイヤーさんは第二エリアに行ってるので、エリアボスを倒さなくちゃいけないんですが……」
「それなら大丈夫。俺たちは明日、エリアボスに挑むからな」
見た目が変えられれば、ステータス重視で選んだちぐはぐな装備も纏まりよく見えるようになるだろう。 機会があれば使ってみたいものだ。
取り敢えず、リリーの場合はアビリティレベルを上げたいとのこと。【盾術】の他に【短剣術】を習得したはいいが、中々アビリティレベルが上がらなくなってきたのだとか。まぁ、レベルによるが色々やりようがあるので大丈夫だろう。問題は、それにさける時間があるのかどうかが……。
「さて、次にナサだが……」
「何かな? ユーク」
次にナサに話しかけるとズズイと近寄ってくる。距離の詰め方がおかしい。流石にびっくりしたぞ。
「……ナサはなんのジョブにつきたいんだ? そのジョブに合わせて育成方針を決めなきゃいけないし、これからの動き方も変わってくる」
ナサの場合、ゲーム開始直後ということでパーソナルレベルも1なので当然ながらジョブも習得していない。今なら方向性が定まっていれば、ある程度どのジョブでも習得できる。まぁ、メカノイド族が収得可能なジョブであればの話ではあるが。
ただ、ナサがジョブについてなにか考えているのかというと……。
「うーん……。ユークはどういうジョブがいいと思う?」
「そこで俺に丸投げか。要するにナサはどういうジョブになりたいのか定まってないってことなんだな?」
そう問うと、ナサはコクリと頷く。
このゲーム、ジョブの種類がかなり多く、習得条件が明らかになっていないものも少なからず存在する。ギルドで雇うことができる護衛NPCなんかがついているジョブは未だにその多くが習得方法が明らかになっていない。NPC専用ジョブなのではないかとも言われている。
また、ユニークジョブのようにそのジョブの存在すら明らかになっていないものもある。メカノイド族の種族ジョブも誰も調べていないから何があるのかも分かっていない。分からないものは目指しようがないのだ。
現状、このゲームを始めるにあたってちゃんと強くなるためには、最低限どういうジョブがあるのかという知識を持っていることが前提となっているため、取り敢えずやってみようと始めたプレイヤーは、ジョブの条件もよく分からず、とにかく進めてクラス1ジョブにしかなれないという事が多発している。
まぁだからこそ公式で条件を公開したジョブも多いし、後々にゲーム中でジョブの習得条件が明かされるなんてこともあったりするのだろう。今のところ後者の方は、条件の一部をNPCが喋るという形で幾らか掲示板で報告されている。とはいえそれらはほとんど習得条件が有志によって明らかにされているジョブだったのだが、調べ物をしないプレイヤーからすればありがたい事でもあったらしい。
あとは公式からすれば、クラス1で腕を磨いてからクラス2ないしクラス3のジョブについてほしいという意図もあったのだろう。だからこそ、クラス1はジョブレベルが上がりやすく、マスターレベルも低い。とはいえ、それだと最初からクラス3のプレイヤーとのステータス差は広がってしまうだけなので、結局は最初からクラス3を目指そうとするプレイヤーが多くなったというわけである。
「ナサは、やりたいこととかは特に決まってない?」
「……特に。戦うのもいいけど、生産? ……も興味はある」
成程な。取り敢えず、戦闘もこなせて生産もできるといったら、
因みに錬金術士はクラス2ジョブであり、クラス3にはその派生として
それらのジョブでは、生産に関わる補正が通常の錬金術士と比べるとかなり低くなるため、生産職としてはあまり使い物にならなくなる。とはいえ、戦闘職としては咄嗟のアイテム製作ができて便利かもしれないが、それならまだ即席調合士の方が安定して生産可能だ。
またジョブの分類も生産職ではなく戦闘職となる。そのため種族で習得できるジョブに偏りがある現時点では、少なくとも魔導錬金士はメカノイド族は習得できないだろう。そして装甲錬金士は即席調合士と同じく、STRが低いメカノイド族ではなる意味がない。
そもそも今回は純粋に生産職として活躍しながら戦闘もこなせることが重要なので、クラス2だが
もし、その過程で生産職としての派生ジョブでも見つかれば万々歳といったところか。何しろ、メカノイド族はまともにどんなジョブになれるのか誰も調べてないのだから、可能性は無限大だ。
まぁ、βテスト時点でその可能性がかなり低いと判断されて、人が離れていったわけなのだが……。
「取り敢えず、それなら戦闘もできて生産もできる
「……ん。分かった」
取り敢えずナサの方針はこれでいいだろう。しかし、やはり今日はナサのジョブ習得の方をメインにしたほうが良さそうな気がするな。後でリーサに相談しておくか。
その後、ふとナサにチームのことを聞かれたので仕様のことかと思って説明したら、なんと俺のチームに入ると言ってきた。すると「それなら私も入ります!」とリリーも挙手をする。
うーん。知り合いではあるし、ジョブも問題ないので、別に入れてもいいのだがその点はレンやリーサ、サザンカさんに相談だな。まぁ最終判断は俺になるんだろうが、どうせなら組むときにフルメンバーな方がいいしな。一応、レンとサザンカさんにはフレンドチャットで送っておこう。
まだ約束の時間までは時間があるので、街で消耗品を見て回ることとなった。リリーとナサは親鳥についてくる雛みたいに俺の後をついてきていた。
この2人ともフレンド登録をしたのだが、この一日で女性のフレンドが一気に増えた(ハルにユキ、ヨハネスにキャンティ、そしてナサとリリーで6人も増えた)ことでミュアがまた不機嫌になりそうなんだが、この際もうどうにでもなれだ。
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