一息ついて
〈戦闘終了。銀鉱石×10、巨像のかけら×2、ゴーレム核【中】×3、『ミスティックロッド』、『阿修羅の面』を獲得しました〉
〈経験値を獲得しました。レベルが1、上がりました。アビリティポイントとステータスポイントが付与されました〉
〈ゼファーのレベルが上がりました〉
〈【杖術】のアビリティレベルが最大になりました。習得可能アビリティに【痛覚遮断】【無我の境地】【中級杖術】が追加されました〉
〈称号【阿修羅の拳を砕きし者】を獲得しました〉
そして戦闘終了。めっちゃ銀鉱石手に入ったな。入手した装備はINT特化の『ミスティックロッド』とアクセサリーの『阿修羅の面』であった。『阿修羅の面』は目元だけの面で、真っ黒に塗りつぶされている。その効果は『アシュラモード』といい、自身に『暴走状態』という状態異常を与えるが、30秒間STRとINTの数値を3倍にし、VITとMINのステータス値を0にするというスキルが使用可能となる。
確かに3倍は強力だが、暴走状態を阻止できる状態異常耐性を持たなければ、敵味方関係なく暴れまわってしまう上に、耐久系のパラメーターステータスが無くなってしまうため、扱いはかなり難しいだろう。因みに暴走状態自体は状態異常回復のスキルやアイテムでは解除不可となり、時間経過での回復を待つしかない。
なお、スキル発動時に面が顔に装着されるらしい。その結果、俺の場合は『幸運の眼鏡』と装備箇所が被るため、どちらかを選ばなくてはならない。まぁ、俺の場合は普通に幸運の眼鏡の方を選ぶな。効果の実感は今のところあまりないが、外しちゃいけないような気もしている。
あと、久々に習得可能アビリティが増えたが、どうやらいつの間にか杖術のアビリティレベルが最大になっていたらしい。これで【中級杖術】が習得可能になった。
専用の習得クエストを受けなければならない生産技能と違って、戦闘技能はアビリティレベルが最大になった時点で習得可能になるからありがたい。まぁ流石に上級技能の習得には技能習得クエストを受けないといけないらしいが、まだ誰も上級技能まで到達してはいないだろうから詳細は知らない。そもそもクラス2の従魔士では上級技能は習得できないので、俺には関係のない話だ。
他に習得可能になったアビリティのうち、【痛覚遮断】は一定ダメージを受けた際の手足の動作不能状態が発生しなくなるというもので、【無我の境地】は一定時間『無動作』になることで次の行動時から一定時間全てのパラメーターステータスの数値を1.5倍にするというものだ。
動作不能状態に関しては、おそらくアシュラゴーレムの拳を砕こうとした際に発生した腕が動かせなくなる状態のことだろう。あれはそうそうなるものではないだろうから、別に習得するほどのものではなさそうだ。
【無我の境地】は全てのパラメーターステータスが1.5倍の効果は魅力的だが、一定時間がどれくらいの長さなのか分からないし、一切動かないというのも結構難しいので、無理に手を出す必要はないかもしれない。
そして称号が増えているが、その効果はゴーレム系に対して部位破壊がしやすくなるというもの。ゴーレムキラーも合わせてゴーレムとの戦闘がやりやすくはなりそうだが、部位破壊が可能となるゴーレムもアシュラゴーレム以外にどれだけいるのか分からないので、汎用性は低いかもしれない。まぁ、称号なので貰えただけラッキーと思っておこう。
因みに10階層のフロアボスを倒したので【鉱山ダンジョン10階層踏破】という称号を全員が獲得できている。実は5階層でも【鉱山ダンジョン5階層踏破】という称号を獲得していたらしいのだが、リザルトでは言われなかったので【阿修羅〜〜】の称号効果を確認する時まで気付かなかった。この称号は、本当の意味での称号なので効果はない。今後、このダンジョンを5階層ずつ踏破するたびに書き換わっていき、最終層のダンジョンボスを倒すことで【完全踏破】となるらしい。
俺のレベルも28になって、いよいよ第一エリアのカンストであるレベル30が見えてきた……が、流石に今日のダンジョン攻略はここらへんが限界だろう。シグねぇ以外はほぼほぼ満身創痍の状態だし、そのシグねぇも多重詠唱に費やしたMPがほぼほぼ自身のMP量に等しかったのか、あのあと魔力欠乏でぶっ倒れていた。
とにかく、目標であった10階層はクリアすることはできたため、問題はないだろう。
気付けば既に時刻は17時を迎えようとしている。ハルとユキは中学生なので、1日合計で8時間までしかログインすることができない。既に午前中に3時間ほど遊んでいたため、残り1時間もない状態だ。
しかし、昨日一昨日の2日間の16時間と今日の午前中でよくレベル26まで上げたものだ。シグねぇの育成方法が知りたいものである。
俺たちはダンジョン攻略をここまでとし、ダンジョンの入口に転移するワープゲートが形成されたのを確認して、それを利用してダンジョンの入口へと戻る。
「流石に今回は骨が折れたな……しばらくはダンジョン攻略はしなくても良さそうだ」
「うーん、シグねぇが居なかったらあたしたち結構 ヤバかったもんなー」
「……最後、まったく役に立てなかった……悔しい」
「まぁ、流石に12節の詠唱はオーバーキルだったかもしれないわね。ユーくんたちが結構削ると分かっていたなら半分くらいで良かったかも」
各々思い思いの感想を口にする。先程の戦闘で俺は『ミスティックロッド』を手に入れていたが、シグねぇは別の杖である『阿修羅巨像の魔杖』を入手していたらしい。俺の『磁器巨像の魔杖』の上位互換のような性能で、ぶっちゃけそっちの方が欲しい。それはシグねぇも同じだったようで、それぞれの杖を交換することとなった。後でサザンカさんに強化してもらえないか聞いてみることにしよう。
ハルは『ミスティックゴーグル』、ユキは『阿修羅巨像の戦鎚』を入手していた。それぞれの装備の詳細は不明だが、どう考えても互いに必要なものが違う様子だったので、そちらも2人で交換していた。
ミスティックシリーズの装備はアシュラゴーレムとは関係なさそうなデザインだが、どうやらレベル30以上のボスモンスターからドロップする、いわゆる汎用装備なのだとか。おそらく第一エリアではこのダンジョンとエリアボスしか入手できないだろう。他にレベル30以上の敵が出てくるような場所があればその限りではないだろうが。
その後、ダンジョンの途中で教えてもらう約束をしていたシグねぇの知り合いの生産プレイヤーを紹介してもらう。そのプレイヤーいわく、明日の午前中は、はじまりの街にいるという事だったので、エリアボスに挑む前に会いに行くことにしよう。そこで消費アイテムを揃えておかないと明日のエリアボス攻略でも苦戦することになりそうだ。
流石にミュアもゼファーもグレイも疲労困憊という様子だったので、今回はちょっと奮発して再び宿屋に泊まることにした。これでみんな、再ログインすればHPもMPも全回復し、元気いっぱいになる。夜ではないが、いつでも使えるのがありがたい。シグねぇたちは、はじまりの街に移動してからログアウトするようだ。
そして、俺は宿屋のベッドに横たわるとあっという間に眠気に包まれ、気がついたらログアウトしていた。
「じゃあ、ユーくん。夏風邪には気をつけるのよ?」
そして夕方。ログアウト後、すぐさま片付けて帰宅準備を済ませたシグねぇたち。あまり遅くなるとおばさんが心配するので、早めに帰ることとなる。元々は俺の様子を見るためだったのだが。
「あぁ、気をつけるよ」
玄関を後にする3人を見送ると、俺は一息つく。
俺の場合は特にログイン制限はないため、すぐにでもログイン可能だが、なんというかかなり疲れたので少し休むことにしよう。
そういえば蓮司たちはどうなっただろうか。ログアウトする際にログインしていたか確認していたが、二人ともログアウトしているようだった。
なので、取り敢えず蓮司に電話してみる。特に用事があったわけではなさそうで、すぐに応答してくれた。
『よう、悠人。どうした?』
「いや、そっちの様子はどうなったかなと思って連絡したんだが」
『あぁ、アルターテイルズのことだな。一応、俺はカンストレベルに到達したかな。リーサの方は何とかレベル24まで上げることはできたぞ』
「マジかよ。よく一日でそこまで上げきれたな」
『あぁ、ゴールデンスライミーを使ったんだよ。あいつら、そこまでの強さの割に経験値がかなり高いからな』
蓮司が言っていたのは、草原エリアに稀に出現するといわれているゴールデンスライミーを利用したレベリングのことであった。
スライミーとはいかにもスライムといった風貌のモンスターなのだが、そのスライミーは草原エリアの奥の方で出現するようになる。その中で稀に金色に光るスライミーが現れるらしく、それがゴールデンスライミーなのだという。
いかにもレア個体という感じの風貌だが、残念ながらレア個体ではなく出現率が低いだけのモンスターだ。まぁ得られる経験値が高いという効果もあるが。
レア個体は特定モンスターの特異亜種みたいなもので、かなり強力なモンスターとなる。確かスライミー系のレア個体はβテストではエンペラースライミーだったはずだ。
「成程な。それでも稀にしか出ないんだろ? どうやってレベリングに使ったんだ?」
『それはな、スライミーの出現スポットに特定のモンスターを呼び寄せるお香を焚いたんだよ。そうすると普通のスライミーからゴールデンスライミーまで大量に出現するってわけさ』
「マジかよ、そんなアイテムあるのか?」
『あぁ、ユーリカの知り合いの生産プレイヤーに頼んで作ってもらった。それで何とかレベリングしたってわけさ。まぁ、途中でエンペラースライミーも出てきて焦ったけどな』
それでもフィーネと連携して何とか倒せたと語る蓮司。なんというか、流石である。
そこで蓮司が歯切れが悪そうに話が止まってしまう。どうしたのかと話しかけると、どうやら夜もリーサの育成をやると約束したはいいものの、夜に家族で出かける予定だったのを完全に忘れていたということらしい。オイオイ。
『ホント申し訳ないが、有沙のこと任せてもいいか? このお返しはいつか必ずするからさ!』
「まぁ、俺は別に予定もないし、シグねぇたちも帰ったから大丈夫だけど……」
『そっか! じゃあ任せたぞ! あ、そうそう有沙がなんか知り合いも連れてくるって言ってたぞ。たしか竜人族の女性プレイヤーだったかな――って、スマンもう時間だ! それじゃあ!』
「あ、おい、蓮司! ……アイツ、言いたいことだけ言って切りやがった。しかし、有沙の知り合いって誰だ……?」
なし崩し的にではあるが頼まれてしまった以上は仕方ない。やってやるか。有沙の知り合いのプレイヤーが誰かは知らないが、別に俺が指南とかしても問題はないだろう。まぁ、あっちがβテスターを所望してたら申し訳ないが。
取り敢えず有沙に連絡しておいて、飯を食ってから再ログインだな。
――――――――――
(8/18)ユークのログアウト時の描写を『従魔全員と従魔同時ログアウト』から『宿屋に泊まってログアウト』に変更しました。
(8/31)『阿修羅の面』の装備スキル『アシュラモード』の効果説明を一部変更しました。暴走状態は時間経過で回復自体はしますが、30秒では回復しない形に変更になります。また、状態異常回復系のスキルやアイテムでは回復できないように変更しました。デメリットを高めに変更します。
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