10階層へ
その後、俺たちは変なパーティーからのちょっかいも受けることなく、順調にダンジョンの攻略を進めていった。
流石にいつまでもシグねぇたちに任せきりというわけにもいかないので、5階層までのようにそれぞれ連携を行っていく。グレイはハルと共に近接格闘による戦闘、ミュアはユキと共に弓と弩弓による遠距離射撃による戦闘、そして俺とゼファーはシグねぇと一緒に魔術と精霊術で敵を殲滅していく。……まぁ殲滅しているのはシグねぇの方で、俺たちはやはりそのサポートくらいしかできていない。
シグねぇは【MPセーブ(魔術)】や【魔力制御】などのアビリティやジョブの補正効果などで、MPの消費をかなり抑えながら高火力の魔術スキルや魔導術スキルを連発できるので、そりゃ勝てないよなというレベルでスキルを放っていく。
俺がやっとのことで一発放てる『緑精の大旋風』と同じくらいMP消費のスキルを何発も撃てるのだから、その消費の抑えっぷりは驚きしかない。
因みに魔術スキルと魔導術スキルの違いについてだが、前者は攻撃系のスキルで構成されているが、後者の場合は補助効果などのスキルが含まれる感じらしい。なお、【魔導術】は【中級魔術】と同じ中級技能となり、【魔術】の習得とクラス2以上のジョブの習得が必要となる。
「そういえばユーくん、まだチームを組んでないみたいだけど……」
「うーん。一応、同級生とかゲームで知り合ったプレイヤーとかを誘って作る予定なんだけど、一応エリアボス攻略のときに集まるからその時に作ろうかなって」
一応、俺、レン、リーサ、サザンカさんは確定だ。あと2人は入れることができるが、守りのタンク系は入れたいところだ。あとは消耗アイテム系の生産職あたりは居ると助かる。
また、サザンカさんの
まぁ、それらのジョブはあくまで理想な上に、そもそも俺らとの相性の問題もあるのでそう上手くはいかないだろう。取り敢えず、残り2人はしばらく保留となるだろうな。
「あ、作る予定なんだ……そっか、そうだよね……」
シグねぇが何やらチームについて話しかけてきて、一喜一憂している。もしかしたら俺をチームの末端に加える気だったのだろうか。
いや、流石に『暁の戦姫』って名前のチームに男がいたら誰かから石を投げられそうな気がするのだが。主に俺が。
改名するには解散しなきゃいけないし、チーム結成には一応FGが必要だから無駄になってしまう。……しかし、こういうシステム的に消費されるお金って、どこに消えてるんだろうな。
因みに結成に必要なのは一人頭1000FGとなる。これはチームメンバーになる予定のメンバーがそれぞれ出し合う必要がある。また、チームメンバーを増やすときも加入料みたいな感じで、加入するメンバーが1000FGを支払う必要がある。解散しても戻ってくることはない。
チーム結成には全員がフレンド同士である必要があり、誰か一人が特定のメンバーとしかフレンドじゃない場合は結成できない。まぁ、フレンド登録自体は迷惑プレイヤーでなければ誰と登録しても問題はない。最大で300人まで登録できるので、人数的にも問題はないだろう。
チーム自体はパーティーに様々な機能を追加したシステムで、他のゲームで言うギルドやクランなどのシステムの少人数版といったものとなる。勿論、このゲームにもクラン機能という機能があるのだが、それはまだ先のエリアで開放されるらしい。もしかしたら第二エリアにある第二の街で解禁されているのかもしれないが、その情報は探してないのでよく分からない。
「んー、じゃあユーニィはライバルって事だな!」
「ん。ユー兄さん相手でも負けない」
ハルとユキは自信ありげに呟く。まぁ、俺自身は普通に勝てるかどうか怪しい(主にステータス的にだ)が、俺の従魔やチームメンバーはそれなりに強いからな。まぁ、生産職のサザンカさんは除くが。
しかし、レンやリーサの方は今頃かなりのレベリングをしているのだろう。なんて言ったって、リーサのレベルは昨日の時点でまだレベル10だったのだ。一応フィーネは俺のチーム(予定)の戦力枠なのだから、最低限戦えるレベルには上がっていてほしい。まぁ、最悪レベル20あれば何とかなるだろうか。
レンの方もおそらくは今日のうちに現在のカンストレベルに達することだろう。後はジョブレベルかアビリティレベルを上げる感じか。
俺がここからレベルカンストを目指すのは従魔たちに経験値を吸われてしまうために厳しいだろうが、その分ジョブレベルらアビリティレベルを上げないとな。目指せ【騎乗】、目指せ【中級杖術】だ。……まぁ【中級杖術】の方はアビリティポイントが足りないからもう少しレベル上げてからじゃないと習得できないのだけども。
そんなこんなで9階層も走破した俺たちは、シグねぇたちも未踏となる第10階層のフロアボスへと挑むこととなる。隠しイベントで入ったときは、ここまでをスキップしてしまったんだよなぁ……。
「さて、次はいよいよ第10階層のフロアボスだけど、今回は流石に私達も最初から一緒に戦うわね。それに、色々鬱憤も溜まっているから……」
フフフと黒い笑みを浮かべるシグねぇ。よほどあのナギサというプレイヤーに対するストレスが溜まっているらしい。その捌け口になるのだから、まだ見ぬフロアボスが可哀想に思えてくる。いや、ボス戦ってそんなものか。
10階層のフロアボスに関しては事前に情報を集めていたユキが「大きくて硬いゴーレムの亜種みたいなやつ」と告げる。それくらいしか情報がないのかと思ったが、まだ10階層までクリアしたプレイヤーがあまりいないからだ。オマケに適正レベルもカンストレベルを超えるらしい。
現時点で9階層に出てくるモンスターがレベル28や29ばかりなので、ボスはそれ以上であることは確かだ。
第5階層ボスのアンコモントカゲがレベル28だったが、4階層の出現モンスターのレベルが24から25くらいだったのでだいたい3から4くらいレベルが上のモンスターが出てくると見ていいだろう。となると、今回はレベル32になるのか。
因みにボス階層の次の階はそのままボスのレベルと同じかというとそうではなく、その前の階層より1、2レベル程上がるくらいだ。隠しイベントで11階層を走ったときに出てきたモンスターもレベル30や31くらいだった気がする。
まぁ、ゴーレムが相手なら斬撃系統の攻撃は効かないだろうから、ミュアやユキには属性攻撃をメインに攻撃してもらうといいだろう。
打撃系統の攻撃は敵の強度次第だが、効果がある場合があるのでハルやグレイには打撃系統の攻撃を与えて敵のヘイトを稼ぎながら、避けてもらう形がいいだろう。もしハルが避け切れなさそうならグレイに乗って逃げるのもありだろう。ハルのSTRの値ならグレイから振り落とされることはないだろう。まぁグレイがダメージを負うかもしれないが、このゲームはフレンドリィファイアはない仕様なので問題はないだろう。……多分。
俺は『姿隠し』で姿を隠せるため、まずは敵の様子を見て、隙があれば【強襲】のスキル『アサルトアタック』でダメージを与えるという形を取る。もし『姿隠し』中にバレて攻撃されても『緑の息吹』で一度は敵の攻撃を耐えられる。その後は後衛に移動する形となるだろう。
ゼファーにはシグねぇと一緒に止めの攻撃を放ってもらうため、待機としている。シグねぇの魔術スキルとゼファーの精霊術スキルをぶっ放せば、最悪勝てるだろうという判断だ。また、まともな回復手段はシグねぇとゼファーしか持っていないので、回復要員でもある。
そんな方針で行くことを話し合い、俺たちはフロアボスが待ち構える戦闘エリアへと足を踏み入れる。
そこには6本の巨大な腕を持ち、3つの顔を持つ、白銀の巨大な人型の像が立ちはだかっていた。
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